35 宝箱は宝物庫を漁る
「こちらが宝物庫ですじゃ。何度も足を止めさせて申し訳ないのう」
兵士の治療を終えたトシゾウは、ダストンに案内され宝物庫の前に立つ。
シオンは別行動だ。ドルフがシオンと話したいことがあるというので了承した。
宝物庫は王城の中心にあるようだ。
何重ものチェックが入り、大きな扉をいくつもくぐり、たどり着いた。
「厳重なのは当然のことだな、悪くない。それよりも魔物を人族の宝物庫に通すのは問題にならないのか?俺が根こそぎさらうつもりだったらどうする」
「お戯れを。そのつもりなら、とっくにそうされておりますじゃろうて。トシゾウ殿は無節操に宝を求めるわけではないようですな。何らかの制約、こだわりとでも言いましょうか。もしくは目的がおありになるようです。違いますかの?」
「わかるか。その通りだ」
ダストンは何でもないかのように笑うが、その目はしっかりとこちらを観察している。
俺は宝を蒐集することが何よりも好きだが、宝を手に入れる過程もそれなりに楽しむことができる。
簡単に手に入る宝も良いが、試行を重ね、潜り抜けた死線の先で手に入れる宝は格別だ。
食事に使うスパイスのようなものと言えば分かるだろうか。
ダストンは何重ものチェックがあることを少々申し訳なさそうに断りを入れてきた。
だが俺は徐々に宝に近づいていく感覚に胸が高鳴ったのでまったく問題ない。
宝には価値がある。ゆえに厳重に守る。そうして守られた宝を奪う。あるいは対価を払い手に入れる。素晴らしい。実に素晴らしいことだ。
欲しい。欲しい。
…だが全てを奪い去ってしまえば、次の宝を手に入れることができなくなる。
人族の創意工夫が生み出す宝は素晴らしい。欲望に任せて全てを奪うのはもったいないことだ。
ダストンはそんな俺の考えを見抜いたのだろう。やはりくえない。頭の回るじじいだ。
だが互いに悪意がないなら、話が早く利になる相手である。
「それではお入りください」
宝物庫を守る最後の扉が、重い音をたてながら開いていく。
中に入る。
迷宮の大部屋ほどもある広い空間だ。
様々な品が規則正しく陳列され、それぞれに異彩を放っていた。
黄金に輝くティアラ、宝石細工で彩られた杖、長剣。
実用性に重きを置き、迷宮深層の素材をふんだんに使用した武具。
金銀胴、ミスリル、神鉄、各種鉱石のインゴッドと属性魔石。
禍々しい気を放つドクロ、迷宮深層のドロップ品。
エリクサーをはじめとした高位ポーション類。
人族の英知が詰め込まれているのであろう、美しい紐で綴じられたスクロール。
現代においては再現が不可能な魔道具類…。
【蒐集ノ神】を全力で発動し、片端から鑑定していく。
さすがに数は多い。収蔵された宝の膨大さは、なるほど迷宮を擁する人族の宝物庫にふさわしい。保存状態も悪くない。しかし…。
「どうかされましたかの?」
俺の反応を怪訝に思ったのか、ダストンが尋ねてくる。
「…微妙だな」
「なんと。ワシが初めて宝物庫に訪れたときは、そのスケールに圧倒されたものですが。トシゾウ殿には不足でしたか」
宝物庫には、迷宮40階層以上の素材を使用した道具も含まれている。
悪くはない、悪くはないのだが…。この中から一つとなると決め手に欠ける。
「例えばこのような品はあるか」
俺は懐から一振りの剣を取り出す。
「これは…。それはハモン、ソリ…?まさか、その剣をどこで…!?」
「迷宮だ。親切な冒険者でな。何度も俺に宝を届けてくれたのだ」
「届けて?いやそれは…、その、なんというか…」
しばし硬直するダストン。
いま老衰で死なれたら困るぞ。
ダストンは俺がエリクサーを取り出したところで我に返った。
「トシゾウ殿には驚かされるばかりですじゃ。ちなみにその剣を売ってくださったりは…」
「却下だ」
「でしょうな…。ですがそれに比肩する宝となると…。もしや!」
ダストンはしばし宝物庫を見回していたが、急に思い出したかのように動き出す。
隅のほうに無造作に置かれていた装備の山をまるごと引っ張り出してきた。
一見すると錆だらけの鉄くずのような品ばかりだが、さて…。
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