20 知恵ある魔物と人族のレベル
「…ふぅ。なんとかラ・メイズは明日を迎えられそうですな」
トシゾウたちが部屋に戻った後、ラザロは盛大に息を吐き出した。
ラザロの仕事は王の影であること。
ラ・メイズの、ひいては人族の敵を排除することだ。
これまでも多くの後ろ暗い仕事をこなしてきており、そちら方面のつても多い。
今は隠居の身とはいえ、ラザロは多くの英雄や化け物をこの目で見てきた。
だが、あれほどの存在にはかつて一度も会ったことがない。
人の姿をとってはいたが、あれはおそらく人間の理解の外にある存在。
繰り返し進化を重ね知恵を得た魔物の中でも、さらに上位の存在なのだろう。
迷宮を抱える人族の世界において、しばしば観測される知恵を得た魔物という存在。
人族の英雄がパーティを組んでようやく戦えるような相手だ。
だが不思議と、これまで魔物によって国が亡ぶほどの被害が出たことはない。
観測された巨大な力を持つ魔物は、いつもいつの間にか姿を消す。
大きな被害が出るときはいつも、人族側から戦いを仕掛けた時だ。
この事実を知る者の間では、自我を持つ魔物に無理に手を出さないのが暗黙の了解となっている。
触らぬ神に祟りなし。
魔物の方も、ラザロの知る限り大々的に人族へ干渉してくることはなかった。
だが、あのトシゾウと名乗る魔物は…。
ラザロは不安に思う。
トシゾウからは、積極的に人族の世界に関わろうとしているような、そんな印象を受けたのだ。
なにか大きなことが起ころうとしているのかもしれない。
近年人族は力を落としている。
かつての全盛期、迷宮へ挑む冒険者のレベルは今より10は高かったという。
火魔法しか使えない人族は積極的に他種族の力を借りて迷宮へ潜っていた。
それがいつからか少しずつ人族だけで迷宮を独占するようになり、今では他種族が迷宮に潜るときには奴隷紋でレベル制限をかける始末。
他種族の助力を失い、人族の領域の一部は荒野に飲まれることとなった。
それに伴う混乱と荒野から侵入してくる魔物の対応にも追われ、さらに迷宮へ割かれる力が減るという悪循環に陥っている。
人族にも事情があるのだが、有事の際にかつてのような戦力は望めない。
「ひょっとしたら、この老いぼれにも仕事が回ってくるかもしれませんな。…おっと、無粋なお客様がいらしたようですね。これはS室のサービスということにしておきましょうか」
ラザロの呟きは誰にも聞こえることなくラ・メイズの夜に吸い込まれていった。
☆
レベル
☆
レベルとは、生物を殺すことで得られる力である。
レベルは、その生物が最初から持つ身体能力に加算される。
その比率は大きく、レベル5の子供はレベル1の大人より強い。
レベルが10も開いていれば、素手で片手間に殴り殺せるくらいの差となる。
強力な装備はレベルによる防御補正を抜くこともできるので、命中すればレベル差を覆すこともできる。
レベルを上げるためには生物に止めを刺すことが重要である。
人間を殺しても経験値が加算されるため、しばしば高レベルな殺人鬼が生まれることもある。
権力者などであれば、他の者に寄生し高レベルになることも可能。その行為は養殖と呼ばれる。
修羅場をくぐっていないため、養殖でレベルを上げた者は自力でレベルを上げた者と比べて戦闘力は低い。
現代のレベルの目安は
レベル1~:駆け出し冒険者、一般人
レベル5~:中級冒険者
レベル10~:ベテラン冒険者
レベル15~:一級冒険者
レベル20~:英雄
レベル25~:勇者、人外
レベル30~:規格外
この評価は、かつての人族全盛期に比べて10レベルほど低い。
全盛期はレベル15で中級冒険者、一流と呼ばれるにはレベル25は必要であった。
現在においては勇者と呼ばれるような存在が、かつての時代においては通常の一流冒険者程度の実力にしかならないほどの開きがある。
なおスキル持ち、魔法使いはそうでないものに比べて一般にレベル+5くらいの力があるとされる。
とはいえ一流冒険者と呼ばれるレベル15以上に至るほど多くの生物を殺せる冒険者は、あらかじめ魔法やスキルを持つことがほとんどである。
そのため、レベル10と15には数字以上の大きな壁がある。
迷宮に潜る場合、パーティなら潜る階層と同じ、ソロならば階層より高レベルであることが推奨されている。
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