17 宝箱は王族にケンカを売られる
初めて評価をもらえてアイキャンフライ投稿です。ありがとう!
食事は部屋に運んでもらうこともできるが、食堂で食べることもできる。
他の客の様子も見てみたかったので、今回は食堂へ行くことにした。
木製の上品なテーブルの上に、前世フランス料理のフルコースに勝るとも劣らないような煌びやかな料理が並ぶ。
どれも作りたてだ。
「パンはシビルフィズ高地で栽培された麦を。メインの肉は迷宮18層のエビルゲーターの肉をローストに。サラダとソースはレインベル領の香草を使用しております。スープはストームバードの卵黄を溶いて…」
俺たちを案内してくれた紳士が夕食のメニューについて説明してくれる。
料理に使用した素材の説明は、食事の雰囲気を盛り上げるには良い手だ。
自分の食べているものの価値を知ることができるのは喜ばしい。
まぁ正直、聞いてもピンとこないのが本音だが。
迷宮産の素材は知っているが、もっぱら集めるだけだったからな。
素材を加工し食事や装飾などの宝物を生み出すのは、人類の最も素晴らしい才能だろう。
エビルゲーターってあのグロイ見た目のワニだよな。食えるのか、あれ。
シオンは熱心に説明を聞いている。尻尾の速度がすごい。口元は緩み、今にも涎が垂れてきそうだ。
まぁ、見るからに美味そうだもんな。
色が、香りが、すでにこの料理が最高級のものであると確信させてくれる。
【超感覚】を持つシオンには、なおさら刺激が強いだろう。
俺も我慢の限界だ。
紳士の説明を聞くのもそこそこに、エビルゲーターの肉を口に運ぶ。
この世界の食事はナイフとフォークを使用する。
微妙に前世のものとは形が違うが、マナーも含めて似たようなものだ。
俺が食べ始めるのを待っていたシオンが、俺の見よう見まねでナイフを動かす。
「美味しいです」
「ああ、美味いな」
それ以外の感想は不要だろう。
ただただ美味い。
人に擬態したのは正解だったな。
ラ・メイズでも指折りの宿で供される料理だからというのはもちろんあるが、基本的にラ・メイズは食料が豊富だ。
金さえあれば、迷宮や各領地から生産された豊かな食事を楽しむことができる。
冒険者区画の屋台も、味付けはシンプルながら美味しいものが多かった。
俺とシオンは次々と料理を平らげながら舌鼓を打つ。
そんな時だ。
「なぜ獣人がここにいる!」
食堂内に威圧的な声が響いた。
和やかな雰囲気だった食堂内が一瞬で静まり返る。
美味いなエビルゲーター。
「おい聞いているのか貴様!この宿は王族たる余でさえ利用する格式高い宿だぞ。汚らしいケモノが居ていい場所ではない。奴隷ならまだしも、人族と同じようにテーブルに座るとは何事か!?」
手と口を動かしながら声の主に目を向ける。
何やら偉そうな男が、こちらを指さしてわめいていた。
後ろにはにやけ面の屈強な男が二人。男の従者だろうか。
どうやらシオンが食事をしているのが気に食わないらしい。
先ほどまで上機嫌に食事をしていたシオンが、ナイフを置き不安そうに俺を見上げてくる。
「貴様がこのケモノの主人だな?はっ、なんだその粗末な服は。それに余が話しかけてやっているというのに食事を続けるとは、なんと意地汚いのだ。大方低級の冒険者が小金でも手に入れて浮かれてやってきたといったところか。身の丈に合わないことをするものではないぞ。さっさとケモノを連れてここを出ていけ!食事が不味くなるわ!」
最初は申し訳なさそうにしていたシオンが、俺が侮辱されるのを聞いて男に怒りの表情を向ける。
俺が侮辱されたことを怒ってくれているのか。
シオンは俺へ視線を向ける。
先ほどの俺の言葉を踏まえて、俺の対応を待っているのだろう。
俺はわめく男に目を向ける。
アズレイ・ラ・メイズ
年 齢:18
種 族:人
レベル:8
身 分:人族の王子
装 備:白竜の長剣 闘亀のチェインメイル 抗毒の腕輪
スキル【蒐集ノ神】を起動し、必要な情報を読み取る。
このスキルは俺が求めた情報を過不足なく表示してくれるので非常に重宝している。
いったいどこから情報を引っ張ってきているのかは不明だが、役に立つのなら問題ない。
このうるさい男の名前はアズレイか。
どうやら王子というのは嘘ではないらしい。
装備もそれなりだ。
冒険者区画には多くの装備が溢れていたが、このレベルの装備はほとんどなかった。
軽く蒐集欲が刺激される程度には強力な装備だ。
だが肝心のアズレイのレベルは8。
低くはないが、そこらの冒険者に毛が生えた程度のレベルだ。
装備に見合っているとは言えない。
それも身のこなしを見るに、自力ではなく他力でレベルを上げたタイプだな。
人族のレベルは生物に止めを差すことで上昇する。
レベル上げに効率の良い迷宮において、しばしば他者の手を借りてレベル上げをする、いわゆる“養殖”という手を使うものがいる。
力は力だ。
それを得るための手段を否定する気はないが、養殖は同レベルまで自力で鍛えた者に比べて弱い。
修羅場の一つもくぐらず、戦闘慣れしていないからだ。
後ろの従者のレベルはそれぞれ13と15か。身のこなしと装備もレベル相応。
人族としてはそれなりであるが、それだけだ。
スキルもなく、俺の障害にはならない。
「雑魚が。殿下の威光に当てられて声も出ないか?まぁ無理もない。殿下は寛大だ。さっさと尻尾を巻いて出ていくのだな」
「殿下、あのケモノには教育が必要かもしれません。ここは我らが引き取ってやり、自分の立場をわからせてやる必要があるかと思うのですがいかがでしょうか」
「ふむ、たしかにそれがこのケモノのためでもあるな。よく見れば、ケモノにしては悪くない見た目をしている。場合によっては飼ってやっても良いぞ。そら、さっさと主人を捨ててこちらへ来い」
アズレイと従者達が下品な笑みを浮かべる。
遠巻きにこちらの様子をうかがっていた他の客も、わめいているのが王族だと知り、俺に憐れみの目を向ける者がほとんどだ。
俺が黙っているのを見て怖気づいていると思ったか。
好き勝手に言ってくれる。うるさいだけなら無視しても良かったが、言うに事欠いて俺の所有物を寄越せだと?
「断る。気に食わないのならお前らが出ていけ。二度は言わん」
俺の言葉に、食堂内が完全に静まり返る。
「き、貴様!平民の分際で、こちらが下手に出て対応してやれば付け上がりおって!」
アズレイが腰に差した剣を抜く。
下手に出ていたなどとどの口が言うのか。
迷宮主の手前と、それなりに人族の世界を楽しみたいこともあって大人しくしていたが、ここまで言われれば容赦する必要はないだろう。
全て、奪い取ってやる。
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