↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
104/172

103 憐れな勇者と邪神の卵

前回:ほっと一息。遠征軍はみんな仲良し。

「閣下、少しよろしいでしょうか」


 トシゾウに話しかけるのは、冒険者ギルド戦闘班を率いるコウエンだ。


「コウエンか、戦闘班もよくやってくれたな。どうかしたか?」


「はい。閣下の戦いで気になった点について質問させて頂きたく。閣下が攻撃の際に叫ばれた、あの言葉にはどういう意味があるのでしょうか」


「言葉というと、ボクノクシャナギヲカエセエエエのことか」


「はい。あとはコレデモクラエエエエエです。気合いを入れるための言葉というよりは、必要だから仕方なく発言しているような印象を受け、気になりました」


「そうか。俺が擬態したのは、昔迷宮で戦ったことのある人族だ。たしかサイトゥーンとかいう勇者だったか。詳しくはわからないが、最高の攻撃を繰り出すときは、よくこのような言葉を口にしていた」


「なるほど。古の呪文なのかもしれませんな」


「うむ。俺も最初は、僕のクシャナギを返せ、という意味だと思っていたのだが、あまりにも繰り返すため、なにか特殊な意味があるのではないかと発言してみたのだ。まぁ、時間があったら試してみてくれ」


「はっ。…それにしても種族だけでなく、特定の個人にまで擬態できるとは、さすが閣下です」


「それほど役に立たない力だがな。能力と容姿が再現できるが、心が読めるわけでもなく、制限も大きい。まぁ、不意討ちをするには有用な力だ」


「閣下が不意討ちをしなければ勝てないような相手が存在するとは思えませんが…」


「…昔の話だ」



 今日は何となく昔のことを思い出す日だなとトシゾウは思った。


 なお、呪文には特に意味はない。サイトゥーンは泣いていい。



「――遠征軍を解散しますわ」


 コレットの宣言とともに、俺は【迷宮主の紫水晶】を起動する。

 俺、シオン、コレット、コウエンを残し、他の者をレインベル領へ転移させた。


 俺は満足している。

 ここまでで必要な目的はおおむね達成できたと言えるだろう。


 他種族とのコネ作り。

 各種族の力を多くの者へ理解させること。

 特殊区画を人間の力で解放させること。


 次は邪魔な人族至上主義者の先兵を根絶やしにすることで、将来的に冒険者の力は高まり、迷宮に宝を増やすためのきっかけとなることは間違いない。万事順調だ。


 思わぬ宝も手に入ったしな。


 手に抱えた卵に目をやる。


 【蒐集ノ神】発動。


 邪神の卵


 一抱えほどの、真っ黒な卵だ。

 ほのかに熱を持ち、規則的に脈動を繰り返している。

 俺は迷宮の魔物を一通り狩り尽くしたが、このようなドロップは見たことがない。


 この卵については謎が多い。

 テンペスト・サーペントに邪神の欠片が入り込んでいたことも、おそらく無関係ではない。


 迷宮において瘴気から生成された魔物は、倒されることでその瘴気を経験値やドロップに変わる。それが迷宮の力だ。

 卵をドロップする魔物というのは存在するが、それはただのドロップであり、無精卵だ。


 ドロップは、迷宮が土地の記憶をもとに再構成しているとかなんとか昔に聞いたが、詳しくは忘れた。

 迷宮の意思と最後に話してからずいぶんになるからな。


 まぁそれは置いておくとして、ドロップとして有精卵が手に入るというのは今までになかったことだ。

 邪神の卵というからには、中には邪神が入っているのだろう。

 シロによると邪神は地中深くにいるということだ。

 だが卵があるということは、邪神は唯一の存在ではないのだろうか。


 迷宮は邪神の力を押さえるために存在するらしいが、俺には関係のない話だ。

 シロがこの卵の存在に気付けば何と言うのか興味はあるが…。


 俺の目的は宝の蒐集と、そのための闘争。そして宝を磨き上げることだ。

 それ以外は些事である。


 邪神の卵というのはなんともそそられる。


 人間が所有できたのならば、邪神も所有できるのだろう。おもしろそうだ。

 邪神は宝の源。その源を所有するということは、素晴らしいことなのではないだろうか。


 ただ、邪神の卵が孵って、うっかり人間を滅ぼしてしまったら目も当てられない。

 育てるならしっかり躾をしないといけないな。


 【蒐集ノ神】による鑑定では、すぐに卵が孵る気配はない。

 孵化には何かしら特定の条件があるのかもしれない。


 今の一件が片付いたらシロの所に顔を出すか。

 ひょっとしたら生まれた邪神が何を食べるか、餌や生態についても教えてくれるかもしれない。


 うむ、やることが多いのは良いことだ。


「シオン、コレット、コウエン。さっさと勇者を潰してレインベル領へ戻るぞ」


「はい!」


「承知しましたわ」


「御意」


 俺たちは物資が積まれている特殊区画への入り口へ引き返した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。