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第69話 敗れたり!

「じゃあさ、そのレールガンが開発されたら、もうここにあるような武器はいらなくなるのか?」

「そうとも限らないよ。レールガンにもデメリットがあってね、例えば馬鹿みたいに電力が必要だとかね」

「電力?」


 指を立てて丁寧に解説する栄介に、武蔵はオウム返しに聞く。

 興味があってというよりは、半ば適当な返事を返しただけに過ぎなかった。


「一発撃つ毎に、千件くらいの家が一日中真っ暗になるくらいの電力が必要だね」

「それは本当に馬鹿みたいに無駄遣いだな……」

「他にも何発も連射できないって弱点もあるね」

「なんでさ? 電気さえあればレーザーみたいにいくらでも打てるんだろ?

 あ、チャージが必要だとか?」

「武蔵はやっぱりレールガンとビームライフルを一緒にしてるね」


 好きなことを間違えられているからなのか、珍しく栄介がむくれているなと感じた。


「レールガンだって普通の銃と同じで投射体を撃ち出すんだよ。撃つのに必要なのものが電気か火薬かの違いだけでね。

 ただチャージが必要ってのは強ち間違いじゃないね。速く撃ち出す分だけ砲身が摩擦で熱くなるから、それが冷えるまで発射できないし、それ以外の理由でも、とにかくバレルの消耗が激しいんだ。何発か撃てば交換しないといけなくなるんじゃないか?」

「それ以外の理由って?」

「難しいよ? 武蔵に理解できるかな?」


 恐らくやや機嫌を損ねているという部分と、親しい間柄という意味もあってか、栄介が珍しくニヤニヤと小馬鹿にしたような表情を浮かべていた。


「むっ。また馬鹿にして」

「そもそも興味あるの?」

「いや、ないね。そんなものと関わることなんて一生ないだろうしな」


 それは単に意趣返しのつもりだった。

 なにもみんながみんな同じものに興味があるとは限らない。


「だろうね。

 でも、ボクはこういうものが作りたいと思うよ」


 ただ武蔵が言葉に含んだ意味も読んだ上で、それでも栄介は「これが自分の好きなものだ」と宣言するかのように、清々しいくらいに爽やかな笑顔でそう言った。




      ◇




 ――何発も連射できない!


 栄介との会話を思い出す。

 そんなものと関わることなんて一生ないだろうと口にした、そのしっぺ返しがこの事態だと言うのなら、それはあまりにも理不尽だと思う。

 それでも思い出せたことは僥倖だと思わずにいられない。


 ――六発。


 それがあのレールガンの限界だ。

 レールガンの仕組みすらまともに知らない武蔵に理由まではわからないが、それ以上は砲身を交換しなければ、まともに狙いが定まらない。


 いや、そもそも六発を待たずとも狙いなんか定まっていなかったのかもしれない。

 今までのフェイントのような銃撃も、すでに砲身が摩耗して狙いが逸れていただけの結果に過ぎないのかもしれない。

 サティはプリムスのことを「アホの子」と称した。その補正すらせずに馬鹿みたいに武蔵を狙い続けたということであれば、まさしく「アホの子」であるに違いない。


 また一発毎に電気を馬鹿みたい必要だと言っていた。

 右腕の代わりにレールガンを取り付けられていたのも、もしかしたらそのためだったのかもしれない。

 電力供給をスムーズにするために、あえて身体に直結させていたのだ。

 現に、レールガンの射撃間隔が徐々に広がりつつあった。


 戦いは最早、レールガンの砲身が消耗し切るか、あるいは電力不足で撃てなくなるか、それとも武蔵が先にかわし切れなくなるかの、ただの根競べ状態に突入していた。


『もう俺たちの勝ちだよ』


 しかしすでに武蔵は勝利宣言をしていた。


 なぜなら勝ち筋が見えている勝負において、”勝利の加護”を持つ武蔵に敗北などない。


 命がけのだるまさんが転んだは、もう武蔵の間合いにまで一息のところまで差し迫っていた。


「……近接戦闘モードに移行」


 アホの子と称されたプリムスにも状況判断能力はあったのか、それとも単に電池切れだったのか、バレルの限界回数をまだ残した状態で、レールガンを放り投げた。


 その様子を見て、思わず武蔵は人生で一度は言ってみたかった言葉を思い出した。


「プリムス、敗れたり!」


 ただカッコつけたかっただけの言葉ではない。

 そうーー。

 例えそれがアンドロイドでも、片腕と主力を欠いた相手に、負けるわけがない。

 与えられた加護が、武蔵の奥底からそう告げるのだ。


 プリムスは最早抜刀すらできなかった。

 残りの一息の間合いを、一息の刹那さえ掛けず走り抜け、そのままプリムスの身体さえ置き去りにして駆け抜ける。


 そこにほとんどの抵抗さえ感じなかった。

 しかしそれは間違いなくプリムスの胴体を通り抜けてー―、


 マリウスの持つ高周波ブレードの如く、


 プリムスの胴体を真っ二つに切り裂いていた。

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