◇第1部 ダイジェスト版
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これは第1部を振り返りたい、
今すぐ知りたいという方向けにまとめたダイジェスト版になります。
第1部のネタバレが含まれますので、未読の方はご注意下さい。
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【第1部 サラス+コミュニケーション】
《第1章 異世界コミュニケーション》
宮本武蔵。
彼の剣豪と同じ名前を持つ少年は、彼に憧れて剣の道を志すも、一度も試合に勝つことができずにいた。
周囲の期待に応えられないことに情けなさと苛立ちを感じていた彼だったが、ある日突然なんの前触れもなくムングイ王国という島国へ異世界転移してしまう。
甲斐甲斐しく武蔵の面倒を見てくれるムングイ王国の女王サラス。
やや乱暴なところもあるが素直で優しく他人を気をかける女騎士カルナ。
男気がありカルナの父でもある騎士団長ヨーダ。
無口ながらも微笑ましい様子を見せてくれるメイドの母娘サティとパール。
文化も言葉も全くわからない異世界生活だったが、武蔵は次第にムングイ王国に溶け込んでいく。
しかし震災で母を亡くして引きこもり状態になっていた幼馴染の樹真姫が心配だった武蔵は、それでも帰る方法を探っていた。
《第2章 アドロイドの娘》
ある日、武蔵はパールと共に、メイド服姿のアンドロイド集団に誘拐されてしまう。
そこで聞かされるサティとパールの真実。
パールはただの少女ではなく”レヤック”と呼ばれる人の魂を操る能力の持ち主だった。
そして過去に、その力の暴走で、自分の母親であるウェーブを含む、多くの人々の魂を抜き取り、殺してしまっていた。
サティはパールの本当の母親ではなかった。
パールの母親が用意した母親役のアンドロイドだった。
そして武蔵とパールを誘拐したのも、ウェーブの記憶を持つ、もう一人の母親役アンドロイドだった。
自分こそが本当の母親と勘違いしたアンドロイドに破壊されるサティ。
それを目撃してしまったパールはレヤックの力を暴走させる。
しかしそれはパールにとっても諸刃の剣。
このままではパールはただただ人の魂を貪り食らう悪魔となってしまう。
パールの暴走を止めるには、彼女が取り込んでしまった魂の持ち主――ゾンビとなってしまった人たち全て殺すしかなかった。
パールを助けたい。そう強く願う武蔵。
そのとき”勝利の加護”と呼ばれる能力が発現、神速の太刀にて瞬く間に全てのゾンビを斬り伏せるのだった。
ゾンビとの戦闘により修復不可能な損傷を負ったウェーブの記憶を持つアンドロイドは、自分のパーツを使えばサティを修理することができると告げ、パールと今生の別れを遂げた。
そしてもう一つ、彼女は「パールが魔王の娘である」という言葉も武蔵たちに残していた――。
この世界には”魔法の杖”と呼ばれる大量殺戮兵器を用いる魔王が存在する。
それが魔王アルク。
魔王アルクは”不老不死の加護”を持ち、決して死ぬことがないのだと言う。
サラスは”勝利の加護”の力で魔王を倒して欲しいと武蔵に頼む。
武蔵は魔王を倒すことこそが、この世界に召喚された理由だと考え、現実の世界に帰るため、そしてサラスたちのためにも、打倒、魔王を決意する。
しかしその直後、ロボク村と呼ばれる場所の付近で”魔法の杖”が使われる。
立ち上がるキノコ雲、周囲のありとあらゆるものを吹き飛ばし、燃やし尽くし、毒さえもばら撒くそれは、現実世界において最凶の兵器であるところの核兵器そのものであった。
《第3章 弱者の選択》
ロボク村の救援に向かうサラスたち一行。
しかしそこで目にしたのは核によってもたらされた地獄のような光景だった。
水場は放射能により汚染され、怪我人の治療もままならない。
そんなロボク村に大量の水を持ち込んだ人物がいた。
それはカルナの友人アルシュナだった。
カルナはかつて母親を殺され、誘拐された過去があった。
そこで知り合ったのがアルシュナだった。
ただ一人救出されたカルナは、いつかアルシュナを救い出すため、そして母を殺した機械の腕を持つ大男に復讐するため、戦っているのだと言う。
しかし久方ぶりの二人の再会は、どこかぎこちないものだった。
その夜、ロボク村にもう一人、思い掛けない人物が訪れる。
それは武蔵が以前に出会った和服姿の女性サキだった。
カルナは彼女こそが魔王アルクの嫁なのだと告げる。
さらにサキから聞かされる衝撃の事実。
魔王アルクはかつて核実験の失敗によって異世界転移した人物だった。
そして再び現実世界へ帰るために核実験を繰り返していたのだ。
サキは魔王を現実世界へ帰したくなかった。
サキはこれから始まる核実験を止めるため、サラスたちに会いに来たのだ。
現実世界へ帰ること、サラスたちを助けること。
それが相反する願いであったことに葛藤する武蔵。
しかしサラスとの約束を守るため、サティと共に核弾頭発射場へと向かう。
どうにか核弾頭の発射を阻止する武蔵だったが、そこにサキが立ちはだかる。
核以外の方法で異世界転移が可能だという証明である武蔵の存在が、サキにとっては邪魔だったのだ。
サキは駆け付けたヨーダによって撤退させられた。
しかしその戦闘でヨーダは片腕を負傷してしまう。
傷口から見えたのは金属の塊。それはかつてカルナの母親を殺した大男と同じ、機械の腕だった――。
その頃、ロボク村では新たに二つの核爆弾が見つかる。
一つはアルシュナが運び込んだ給水車の中から。
そしてもう一つは自殺した村長が隠し持っていた。
給水車から見つかった核爆弾は、サラスが”バリアンの力”によって停止させた。
しかし村長が隠し持っていたものまでは止めることができなかった。
村を救うには、誰かを犠牲にして、核爆弾を遠くへ持ち出す他ない。
サラスは、カルナに核爆弾を運び出すよう命じる。
それは姉妹同然のカルナに死ねと命じるようなもの――しかし他に村を救う手段がなかった。
村に核兵器を持ち込んだのはアルシュナではなく、その妹のクリシュナだった。
アルシュナはとっくに亡くなっていた。
どれだけ頑張ってもアンドロイドには勝てない。母親の復讐なんて果たせない。
核爆弾が爆発する寸前、弱い自分は何もできなかったのだと悟り、大声を上げて泣くカルナ。
そこに武蔵とサティが辿り着く。
核爆弾を核弾頭に乗せて空高く発射。
間一髪のところで核爆発から逃れる。
しかし無傷とまではいかなかった。
ここまで甲斐甲斐しく武蔵のサポートをしていたサティが、突然、機能停止してしまう。
様々な傷を負いながらも、ようやく事件は収束した。
しかしこの騒動によって、魔王アルクはとうとう武蔵の存在を認識してしまうのだった。
《第4章 終わりのノスタルジア》
あわやカルナを殺してしまう事態に、王である自信を失ってしまったサラス。
そんなサラスが突然、魔王に会いに行くと言う。
サラスには魔王を現実世界へ帰す手段があったのだ。
しかしそれは同時に武蔵との別れも意味する――。
サラスはそのことを内緒にしたまま、魔王の暮らすニューシティ・ビレッジへ向かう――しかし魔王は行方不明となっていた。
ニューシティ・ビレッジの探索中に、パールは倒れてしまう。
パールは魔法の杖の影響で、白血病にかかっていた。
この世界で白血病を治療する手立てはない。
死にたくないと泣くパールは、武蔵と無理心中を謀る。
サラスがこれを未然に防ぎ、パールに本当は武蔵とどうなりたいかを問う。
パールは、武蔵と一緒に生きたいと願い、武蔵に結婚指輪を送る。
以前、武蔵は文化の違いから誤ってパールにプロボーズをしていた。
しかし、今度のそれは正真正銘のプロボーズで――武蔵はそれを受け入れた。
その翌日、ムングイ王国をクリシュナが操る巨大ロボットが襲う。
暴れる巨大ロボットには核爆弾まで搭載されていて、時間が経てば爆発するのだと言う。
武蔵とヨーダの二人でどうにか巨大ロボットを足止めをする中、カルナがクリシュナの説得に当たる。
どうにかクリシュナの説得に成功。彼女に爆発を解除してもらう。
しかしクリシュナが持たされていた核爆弾の解除装置は、その逆、起爆装置だった。
全てはムングイを確実に滅ぼすため、サキが仕組んだ罠だった。
核爆発を止める手段はない。
絶体絶命のその時、そこに現れたのは、以前、武蔵が知り合ったロースムと名乗る片足の青年で――彼こそが魔王アルクだった。
アルクの存在に気付いたサキは核爆発を解除。
しかしサキはアルクに全ての企みを見抜かれ、凍結されてしまうのだった。
魔王アルクは、今までの核兵器による被害を謝罪した。
そしてパールの治療を買って出た。
魔王アルク自身も、白血病を患っていた過去があった。
そのためニューシティ・ビレッジに、パールを治療する手立てがあるのだと言う。
俄かに信じ難い話ではあったが、パールを治す方法は他になかった。
武蔵はパールを連れて、魔王の下へ向かう。
パールの治療は想像を絶する過酷さだった。
抗がん剤の影響で髪は抜け落ち、眠ることもできない苦痛が襲う。
しかし、それでも完全に治る保証はなかった。
魔王アルクが白血病を克服できたのは、異世界転移時に授かった”不老不死の加護”によるもの。
パールを完全に治すには、彼女も異世界転移させるしかなかった。
異世界と思われたこの世界は、地球の上空――高度五百キロ辺りに浮かぶ島だった。
島は”時間の壁”によって覆われていた。
この時間の壁を超える方法があれば、現実世界に帰れるのだと、魔王アルクは言う。
時間の壁を超える方法――それは”バリアンの力”だった。
ロボク村で核爆弾を、サラスは時間を止めたかのようにして食い止めていた。
しかし”バリアンの力”はサラスの魂を蝕むことを、武蔵は知っていた。
一方その頃、ムングイ王国では、ヨーダ率いる騎士団が、サラスに対して反旗を翻した。
ムングイ王国を追われたサラスは、武蔵が救出する。
しかし、彼女に、もう帰る場所はなかった。
居場所を失ったサラスは、武蔵と魔王アルクを元の世界へ帰すことを約束する。
それで自分が廃人になることを理解しながら――。
しかし武蔵は元の世界へは帰らないと言う。
武蔵が帰りたいと思う場所は、いつしか現実世界ではなく、ムングイ王国になっていた。
パールも自分の治療のために、サラスが犠牲になることを良しとはしなかった。
武蔵の言葉に思い悩むサラスを、凍結されていたはずのサキが襲う。
サキにとって、魔王アルクを確実に現実世界へ帰すことのできるバリアンが邪魔だったのだ。
そう――サキは殺すことを制限されていたバリアンを、万に一つ殺せる可能性に賭けて――ただ、そのためだけに核兵器を使用していたのだ。
サラスは、彼女だけは許すことができなかった。
”バリアンの力”を使ってでも、サキを倒そうとする。
しかし完全に倒し切ることができず、逆に返り討ちにあってしまう。
バリアンを殺し、これで永遠に魔王アルクと一緒にいられると確信するサキ。
しかし、その様子を見ていた魔王アルクは、ここが諦め時と判断して、自殺してしまう。
――そして武蔵は、女神ラトゥ・アディルによって、元の世界へと強制送還させられる。
サラスがどうなったのか――。
パールがどうなったのか――。
――何もわからないまま、元の世界へ帰らされてしまった武蔵は、現実の世界で生きる意味を見出せず、友人や真姫を捨て、必ずムングイ王国へ帰るのだと誓う。




