12-1
〔Side.A 一人称〕
僕は完全に固まってしまっていた。
あまりに支離滅裂すぎる。
美樹さんの屁理屈を、こんな状況で信じろという方がどうかしてる。
だいたい……マキちゃんが真紀子なら、電話してきた相手は一体誰なんだ?──全ての辻褄があっているようで、美樹さんのいってることには、なんの根拠もないのだ……だけど、仮に美樹さんが正しいすると、最近病気がちでその原因が不明なのも、ユースケが死んだのも、マーコの店が閉店するのも、街で不幸な出来事が多いのも、全ての事柄が完璧に説明できてしまう。
いや、待てよ──そうやって都合良く全て真紀子の所為にしてしまって本当にいいのか?──僕は考えるのやめてしまって、なにか大切なことを見落としてしまっているのではないのだろうか?──もしもこんな安易に結論を出して納得してしまうことが──そもそも呪いだとしたらどうだろう?──つまりはである──このなかのきっと誰かが狂っている──しかし、的確にそのことを証明する方法はなにもない──そもそも僕の脳みそが──単純に──おかしくなってしまっただけなのかもしれない──だとしたら──目の前の光景は全てが幻覚で──僕の肉体は精神病院の地下室に秘密裏に隠され──鎖や縄でぐるぐる巻きにされたあげく──身動き一つとれない状態のはずだ。
そんな心理的思考実験で混乱する僕の頭のなかで──だが、確実に──僕は選択を迫られていた。
マキちゃんと美樹さんのどちらか一方を必ず失ってしまうということだ。この事実だけは確定していて決して揺らぐことはない。
「この人……キモい……」
マキちゃんがいった──いや──真紀子なのか?




