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夏の或る夜の夢の続き  作者: 横滑り木偶臣
第1章(真夏の変質者およびその奇妙な行動に関する考察)
8/84

1-4

〔Side.A 一人称〕


「へ……変態ですか……」


 毎年恒例──本当に思いだしたくもない。


 奇妙な行為を面白がってつぎつぎと真似を奴らが出てくる。


 この街では模倣犯が後を絶たない。今年も海パン野郎と偽警官の追走劇が街中でくり広げられていた。


 僕はビールの泡を喉の奥へと流し込む。


「あんなことをしてなにが楽しいんですかね?」


「恭司くん、そんなに荒れたりしないの。この夏の一大イベントじゃない」


 そういってビール瓶を美樹さんが僕のグラスに傾ける。


 僕は既に出来あがってしまっていた。少し飲み過ぎ。情けないことに、気がついた時にはトイレへ直行──背中を美樹さんに摩られていた。


 トイレから戻ると、


「ゲロは呪いだな」と、マスター。「お前、祟られてるぞ」


 などと意味不明なことをいわれてしまう。


 この人は大のオカルト好きだ。


 で、示しあわせたようにグッドタイミングでバッドニュース。情報は備え付けの旧式ブラウン管テレビから──また今日も奇妙なニュースが流れる。


『先日起こった若い男女の無理心中→女の死体はまだ見つかってはいない→大方、女の方は死ねなかっただけなのではないのかと思うのだけれど→現場には何者かが死体を持ち去った痕跡→どこかに遺体を隠蔽した可能性あり』


 テレビはそんな風に面白おかしく報道していた。僕とマスターがこのオカルトなニュースに固まっていると、その場の空気をまったく読まずに美樹さんがいった。


「それでさ、例の変態どもを私、捕まえようと思うんだよね」


 はい?……なんですか……それ?……海パン男と偽警官を捕まえる?……なぜそうなる?……奴らは単なる愉快犯ですよ……放っておくのが一番なのでは?……などと、僕は思うのだけれど、美樹さんはこういうのだ。


「あいつら毎年懲りずによくやるよね。でも、正直、もう飽きちゃった」内緒話でもするように僕の耳元でそう囁いた。「若い子に悪影響だし、どんなに自分が詰まらない人間なのか、思い知らせてやらないと」

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