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夏の或る夜の夢の続き  作者: 横滑り木偶臣
第11章(エンドロール・中)
79/84

11-4

     *


「恭司くん、落ち着いて聞いてね……受け入れるのは……とても辛いことになると思うけど」


 美樹さんは僕にそういった。とても奇妙な話を続ける。


「その壱──数ヶ月前に若い男女が無理心中をはかった。女の子の死体はまだ見つかっていない。あなたの恋人の精神は……今……その女性の入れ物のなかに入ってる……」


「……?………………」


「その弐──あなたの初恋の相手、山田真紀子は10年前の8月14日に亡くなっている」


「…………?…………」


「その参──彼女はいまあなたのすぐ側にいる」


「………………?……」


「死者は自分では生命体(エナジー)を生みだせないから、他人から生命体(エナジー)を奪い続けなければ存在することができないの……だから……」


「……………………?」




〔Side.B 三人称〕


 偽警官が拳銃に指をかけたその時だった。


 突然、白い影が飛ぶ──白く塗られた死神だった。拳銃。死神が弾いた。転がってくる。マキが拾った。奴らがもつれている間に、恭司はマキの手を強く握った。


 バンにむかって走る。


「逃げよう」「逃げるってどこに?」「アビィ・ロード」「なんで?」「わからない……」


 車のキーを差し込む──エンジンがでかい音を立てて回転する。サイドブレーキを外し、ギアをP(パーキング)からD(ドライブ)に切り替えた。発進させる。だけど、


「糞ったれめ」偽警官。「逃げれると思うなよ」


 死神にかじりつかれた状態で──偽警官がいる。前方を塞がれた。彼は躊躇せずにアクセルを踏む。偽警官が手をかざした。


「HÂÂÂĀĀÅĀĀÂÂÂRP!!」


 車体がバウンドする。前輪から持ちあがり、浮きあがって落下。ケツに衝撃。いやー、とマキが悲鳴をあげた。


「南無三!」偽警官が拳を放つ。バンのフロントガラスが一気に割れた。「ははははは、もう、逃げ場はないぞ。おとなしく我々に処分されろ、この出来損ないが!!」


「いやー、来ないでー、私に触らないでー、いやー、いやいやー」


 混乱したマキが玩具のピストルを発砲する。弾丸。偽警官の頭上で円を描くように弾かれた。


「効かねえんだよ。生命体(エナジー)を込めねえと、そいつは単なる玩具なんだからよ」


 マキの喉元に偽警官の魔の手が迫る。恭司はシートを後方に素早く倒した。マキを抱くように覆いかぶさる。彼の首筋に偽警官の爪がめり込んだ。


「マキちゃん──そいつを──そのピストルを──僕に渡して──」


 マキの左手、恭司の右手、重なりあう、拳銃が渡された。


「死神と地獄へ帰れ」回転する。銃口が偽警官を捉えた──

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