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「恭司くん、落ち着いて聞いてね……受け入れるのは……とても辛いことになると思うけど」
美樹さんは僕にそういった。とても奇妙な話を続ける。
「その壱──数ヶ月前に若い男女が無理心中をはかった。女の子の死体はまだ見つかっていない。あなたの恋人の精神は……今……その女性の入れ物のなかに入ってる……」
「……?………………」
「その弐──あなたの初恋の相手、山田真紀子は10年前の8月14日に亡くなっている」
「…………?…………」
「その参──彼女はいまあなたのすぐ側にいる」
「………………?……」
「死者は自分では生命体を生みだせないから、他人から生命体を奪い続けなければ存在することができないの……だから……」
「……………………?」
〔Side.B 三人称〕
偽警官が拳銃に指をかけたその時だった。
突然、白い影が飛ぶ──白く塗られた死神だった。拳銃。死神が弾いた。転がってくる。マキが拾った。奴らがもつれている間に、恭司はマキの手を強く握った。
バンにむかって走る。
「逃げよう」「逃げるってどこに?」「アビィ・ロード」「なんで?」「わからない……」
車のキーを差し込む──エンジンがでかい音を立てて回転する。サイドブレーキを外し、ギアをPからDに切り替えた。発進させる。だけど、
「糞ったれめ」偽警官。「逃げれると思うなよ」
死神にかじりつかれた状態で──偽警官がいる。前方を塞がれた。彼は躊躇せずにアクセルを踏む。偽警官が手をかざした。
「HÂÂÂĀĀÅĀĀÂÂÂRP!!」
車体がバウンドする。前輪から持ちあがり、浮きあがって落下。ケツに衝撃。いやー、とマキが悲鳴をあげた。
「南無三!」偽警官が拳を放つ。バンのフロントガラスが一気に割れた。「ははははは、もう、逃げ場はないぞ。おとなしく我々に処分されろ、この出来損ないが!!」
「いやー、来ないでー、私に触らないでー、いやー、いやいやー」
混乱したマキが玩具のピストルを発砲する。弾丸。偽警官の頭上で円を描くように弾かれた。
「効かねえんだよ。生命体を込めねえと、そいつは単なる玩具なんだからよ」
マキの喉元に偽警官の魔の手が迫る。恭司はシートを後方に素早く倒した。マキを抱くように覆いかぶさる。彼の首筋に偽警官の爪がめり込んだ。
「マキちゃん──そいつを──そのピストルを──僕に渡して──」
マキの左手、恭司の右手、重なりあう、拳銃が渡された。
「死神と地獄へ帰れ」回転する。銃口が偽警官を捉えた──




