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「この街の変質者の正体はあんたたちか!?」彼はいった。「一体、この街であんたたちはなにをしているんだ?!」
「それは、私が答えなくとも……」偽警官が黒光りする拳銃をむける。「ゆくゆく……わかっていくことだよ、恭司くん。私の任務は逃亡者の確保と能力に目覚めた人間の捕獲なのだから……」
「いっていることの意味がわからない!?」彼はいった。「どうして、僕たちの真似をしてこんなことをするんだ?!」
「真似だって……心外だな……」偽警官はいった。「君たちは自分がオリジナルだと思い込んでいるようだが、我々を模倣したにすぎないのだよ」
「なんだって……」
「毎年……一定の割合で……必ず逃走者が出てくる……腐った蜜柑ならぬ納豆という名の落ちこぼれどもだ……我々はそれを確保する……基地周辺……研究施設の周りは……一定数の被害者が出る……秘密を知られては困る……我々はデマを流す……都市伝説という迷信だ……やがて、それは……平将門や巫女の生贄に……伝承は本物のように語り継がれるというわけさ」
「そうだったのか……」
「多くを語らずとも、君はもうすぐ理解することができる」
「なんだって?」
「君は数ヶ月前に、神崎グループの新薬のテストモニターに応募してる。おいしいバイトには必ず裏があるって話だ。もうすぐ、君もこの能力に目覚めるはずだ」
「思い当たる節がないぞ……」
「おいおい、当たり前だろ……」偽警官はいった。「君の記憶はきっちり改竄させてもらっているよ。そういわれれば──て、思わないかい?──変な具合に思いだせないことが多いはずだよ」
「なんてことだ……でも、僕は行かないよ……」
「それは、困る、任務なんだ」偽警官は彼を鋭い眼光で睨みつけた。「君は神崎グループの秘密を知り過ぎた。もしも、我々に同行できないならここで死んでもらわないと……」
B級ハードボイルド小説さながら──この怒涛の展開に彼の背筋はヒヤリと凍った。




