11-1
〔Side.B 三人称〕
「HÂÂÂĀĀÅĀĀÂÂÂRP!!」
蛇が地表を這うが如く大きな揺れが生じた。二人はバランスを壊して地面に倒れ込んだ。起きあがり、彼はその方向へ視線を放った。
その場所には警官がいて、微動だにせず、死神と対峙している。拳銃をぶちかます。
「逮捕だ──逮捕する──!!!──国に逆らう人間は──!!!──皆殺しだ──」
嘘のような光景だった──彼には──とても、これが現実の出来事だとは思えなかった。死神はハリウッド映画のCGさながらに吹き飛ばされ、シャッターの降ろされた酒屋の店先に激突する。
「警察です! ご協力願えますか!」猫背の背筋が折り曲がった目の前の人物──ふたりに襲いかかろうとしていた。「とりあえず、君たちの身分証明書を見せてくれるかな?」
長身の警官。高圧的な態度で長い腕を折りたたむ。二つ折りの警察手帳。角張ったあご。一筆書きの眉毛。たらこ唇。手帳の中身が目についた。濃い焦茶色の手帳。ポリスとアルファベット表記。明朝体。巡査・中井春彦。ポケットに警察手帳をしまう。
マキがいった。
「この人──偽物だよ──偽物の警官──だって、この人の持ってるの玩具のピストルだもん」
「ご名答!」と目の前の警官がいった。「これは単なる玩具だ。これだけじゃあ、なんの役にも立たない品物だ。だけど、ほんのちょっとだけ、人間の生命体を込めてやるとこういう風にできる!!」
警官は拳銃の引き金を引いた。鮮やかな赤色の火花が飛び散り、爆竹のごとき銃声が静かな夜の街に響き渡った。




