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頭では──美樹さんとの──こういう関係は──もう終わりにしようと──いくら考えてみても──やめることのできない自分が──僕のなかには存在している。
そいつは、実際に、いつしか、マキちゃんには、知られたくない本当の自分を、美樹さんには、理解して欲しいと、願望する、そんな風にまでなってしまっていた……
でも──美樹さんは──僕の──彼女じゃ──ないんだ。そんなことは、まったくお構いなく、美樹さんはペロリと料理をたいらげ、追加でライスの注文をしていた。
「恭司くん。また痩せたね」
僕の体重は、ピーク時から10キロも痩せ衰えていた。
美樹さんとマキちゃんの両方に会いにいっている。
服だって少しぐらいは小洒落ていたい。父から金魚屋の給料を前借りしている。知り合いに紹介してもらった日雇い労働は、少々ヤバくてもきちんとこなすようにはしていた。
それでもお金というものは、いくらあっても足りることはない。
僕には仕事が必要だった。金になることなら、なんでもいい。たとえそれが、新薬を投与されるモルモットもどきのバイトであっても……
「病院行った方がいいよ。顔色悪いし」いつもと変わらず、美樹さんは優しく微笑んでくれる。
だけども医者のくれる処方箋といったら、気つけ薬みたいなものばかりなので、今まで効き目のある薬の類いを病院からもらったためしはない。
要は病状のない病気を治す薬など、この世のなかには存在しないのだと僕は思う。
不定期に安い賃金で長時間こき使われている。こんな状況で、そもそも体調を壊さない方がおかしい。
それでも金が欲しくて働くわけだから、安静にしろといったところで最初から無理な相談なのである。




