表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夏の或る夜の夢の続き  作者: 横滑り木偶臣
第8章(葬儀場にて友は焼かれる)
61/84

8-6

 天真爛漫なマキちゃんの存在がその当時の真紀子のイメージに重なりあい、僕女の姿に初恋の残像を重ねあわせていた。


 マキちゃんが真紀子であれば、どんなにいいだろうか──


 そんな僕の妄想とは裏腹に、電話越しに接するその雰囲気は落ち着き払い、それにどこか疲れ切った感じが伝わってくる。


 そうマキちゃんとは似ても似つかない女性の声なのだ。


「今年で10年目だね。約束覚えてる?」


 思わずはっとさせられた──それはユースケが死ぬ間際にいった言葉──その言葉とまったく同じ科白だったからだ。約束とは一体なんなのだろう?──もしかして呪いかなにかなのか?


「金星食。みんなで見ようっていっていたよね」


 驚きと、そんなことかという安堵の気持ちで、思わず床に転げ落ちそうになった。よくよく、考えてみれば、なにもかもが勘違い──思い込みの連鎖反応なのだった。


 ユースケがそんな理由で死ぬはずはないし、僕のまわりで起きている奇妙な現象も所詮は、ただの偶然の産物に過ぎないのだろう。


 僕自身が人生の苦境に立たせれていた。同時に働き過ぎてもいた。不幸な出来事が偶然重なったとき、そんな呪いとかいう非科学的な事柄が、実際に引き起こされたと信じ込んでしまったのだ……


「マーコには、僕から伝えておくよ」


 そういって僕は電話を切った。喉に詰まった魚の骨が一気に取り除かれた。そんな安堵感で心が満たされた。


 そういえば真紀子の奴め、結局文化祭のライブは見に来てくれなかったな。あんなに楽しみにしてくれていたのに……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ