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そんなことをいわれても──まったく身に覚えもなく──チンプンカンプン──適当に受け流してしまおうと思うのだが、ユースケはその話をやめようとしない。
「お前は覚えていないかもしれない」
それは10年前の8月14日の出来事。
思いだしたくもない例のあの奇行についてのことらしい。
こんな小さな街で一大事件になり、新聞の一面にデカデカと載ってしまった例の出来事。
「ユースケ……一体なんのことだか……こっちはさっぱりわからない……」
僕はいった。そうすると、ユースケはこう答えた……
「白いナースだよ……」声は震えているようで笑っていた。意味がわからない。「映っているのはふたりだけしかいない……けど、もうひとり、いたはずなんだ……」
「ユースケ、お前以外……誰がいたっていうんだ……」ユースケが8ミリのビデオカメラをまわして僕とマーコを撮影した例の事件……もうひとりといわれても、まったく思いだすことができない。「お前じゃなきゃ……一体誰がその場所にいたっていうんだ……」
「本当に覚えてないんだな、お前──」ユースケは相当酔っぱらっているらしく、所々呂律がまわらない様子が電話越しに伝わってきた。「俺は約束を守れそうにない。こんな人間になってしまったから──」
「ユースケ……おい、大丈夫か……」
「本当は三人で決行する予定だった……」相当思い詰めたような声。遠くで雷が鳴っていて、それがとても異常に思えて仕方がない。「けど、そいつは参加するっていって……」
どうやら、10年前の8月14日──その奇行をおこなった際に──もうひとりの誰かを含めた四人──なにか約束をしたらしい。ユースケがいった。
「俺がお前に会いにきたのは、本当は励ます為でも、慰める為でも、ましてや昔の恨み言や愚痴などを聞かせる為でもない。
恭司、お前に会って、その存在に触れ、その全てを感じることができれば、昔の輝いていた自分に、戻ることができるんじゃないのか。そんな風に考えてさ……なのに、お前はもう昔のようにはギターを弾いていなかった……
3年間、一体お前はなにをしていたんだ……」




