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〔Side.A 一人称〕
「ホッ……熱い……」
出来たてホカホカのそのたこ焼きが、美樹さんの口のなかに放り込まれていく。
こんなに美味しそうにたこ焼きを食べる女の人を、僕は他に見たことがない。食べながら喋りかける彼女の素振りに、いつものように僕は見とれてしまう。
「……ん?……なに?」
パッチリとした二重の瞳、彼女は少し驚いたように上目遣いで僕のことを見つめた。
毎回、同じような反応をして僕の心を弄ぶのだ──確信犯的に──瞬きをした次の瞬間、笑みを浮かべ僕の目の奥を見つめ返してくる。
女の罠だとわかりきっているのに、ときめいてしまうのはなぜなんだろう?
「ねえ、ちゃんと話聞いてる?」
「え……あ、すいません」
素振りや唇の動きに目線を送っているのに、彼女の言葉が頭のなかに入ってはこない……それはきっと、美樹さんの透き徹る夏の装いの所為だ。
白地にペイズリー柄。ホルターで吊るすミニのドレス──癖のない黒髪がカラフルなサマードレスにあわさって、美樹さんをより魅力的に僕の瞳に映していた。
「焼き鳥一丁!」店のマスターが雑に焼き鳥の皿を置く。「なんだ、文句でもあんのか、この野郎!」
僕が文句をいう前に、マスターはさっさとタバコを吸い始める。どうやら、初めから客のいうことなど聞く気はさらさらないようである。
「なんでもないです」と、僕はいった。「いつも……美味しい料理をありがとうございます……」
確かに料理は美味いのだ。
マスターにかかれば和洋折衷なんでもあり──おすすめは意味不明な創作メニュー。
けれどポリシーというものがこの人には一切ない。現に、出てきたたこ焼きも焼き鳥もレンジでチンするヤツの方。無節操なこの店の雰囲気に、僕は現実に引き戻されてしまう。




