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夏の或る夜の夢の続き  作者: 横滑り木偶臣
第1章(真夏の変質者およびその奇妙な行動に関する考察)
5/84

1-1

〔Side.A 一人称〕


「ホッ……熱い……」


 出来たてホカホカのそのたこ焼きが、美樹さんの口のなかに放り込まれていく。


 こんなに美味しそうにたこ焼きを食べる女の人を、僕は他に見たことがない。食べながら喋りかける彼女の素振りに、いつものように僕は見とれてしまう。


「……ん?……なに?」


 パッチリとした二重の瞳、彼女は少し驚いたように上目遣いで僕のことを見つめた。


 毎回、同じような反応をして僕の心を弄ぶのだ──確信犯的に──瞬きをした次の瞬間、笑みを浮かべ僕の目の奥を見つめ返してくる。


 女の罠だとわかりきっているのに、ときめいてしまうのはなぜなんだろう?


「ねえ、ちゃんと話聞いてる?」


「え……あ、すいません」


 素振りや唇の動きに目線を送っているのに、彼女の言葉が頭のなかに入ってはこない……それはきっと、美樹さんの透き徹る夏の装いの所為だ。


 白地にペイズリー柄。ホルターで吊るすミニのドレス──癖のない黒髪がカラフルなサマードレスにあわさって、美樹さんをより魅力的に僕の瞳に映していた。


「焼き鳥一丁!」店のマスターが雑に焼き鳥の皿を置く。「なんだ、文句でもあんのか、この野郎!」


 僕が文句をいう前に、マスターはさっさとタバコを吸い始める。どうやら、初めから客のいうことなど聞く気はさらさらないようである。


「なんでもないです」と、僕はいった。「いつも……美味しい料理をありがとうございます……」


 確かに料理は美味いのだ。


 マスターにかかれば和洋折衷なんでもあり──おすすめは意味不明な創作メニュー。


 けれどポリシーというものがこの人には一切ない。現に、出てきたたこ焼きも焼き鳥もレンジでチンするヤツの方。無節操なこの店の雰囲気に、僕は現実に引き戻されてしまう。

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