6-5
草むらにマキちゃんを連れ込み無理に唇を奪った。
ほんの一瞬の出来事なのに──何時間も一緒にいるように錯覚してしまう。
このまま時間が止まってしまうような……
「あ……雨……」
ざざぶりの雨がふたりの邪魔をする。
このぶんだと今年の花火は中止か?
下着までびっしょり濡れていた。僕は雨をしのぐ為にマキちゃんの手を握り、家ににむかって走った。都合良く両親は親戚の家に行ってる。
やっとの思いで家にたどり着く。
玄関を開け、真っ先にマキちゃんにシャワーを使わせた。
風邪などひかれたら大変だし、こんなことになって不愉快でないか心配だった。とりあえず着るものを用意しなければならない。
自分の使い古したジャージとTシャツ。少し躊躇いながらも男物の下着を用意した……着替えは他にない……
ジャージに着替えたマキちゃんは、どこかいつものような元気がない。風邪をひいたのではないかと心配になり、そっと彼女の身体を抱きしめた。シャンプーの匂い。仄かに香るその髪。少し冷やされた身体。
熱はないようだけど……
マキちゃんは痒そうに足を少し擦りあわせた。
ご免……水虫を移してしまったね……
「これ……少し大きいし……臭いよ……」
上着のボタンをとめる僕にむかって、冗談でもいうようにマキちゃんはそういった。
それだけで、僕は救われたような気持ちになった。




