6-3
「夏が終わると暫く会えないね」マキちゃんがぼそっといった。
さほど離れていない、この街から東京への移動が四時間を超えるのは尋常じゃない。
弱まっていく蝉の鳴き声が、弥が上にも夏の終わりを僕に感じさせた。
僕はとても悲しい気持ちになってしまい、マキちゃんに対する気持ちが抑えきれなくなっていく。
〔Side.B 三人称〕
草刈機のエンジン音が夏空に反射していた。8月の熱気に打ちのめされながら、彼は淡々と作業を続けた。刈り取られた草の束が、放射状に積み重なっていく。遠くで農家の人間が、雑草に火をつけ燃やしていた。煙が立ちあがり、やがて空に灰が浮かびあがっていく。熱にうなされたように彼の身体は汗ばむ。太陽は容赦なく照りつけていた。夏の日差しは休むことを知らない。意識が飛びそうになった次の瞬間、休憩との声が聞こえて、彼は機械のスイッチを切る。事件はその日に起こった。
*
炎天下の労働で肉体を酷使した後、彼は休憩の為にコンビニに立ち寄った。
お目当は、たっぷりのチョコチップをまぶしたアイスクリーム。
料金を払い商品を受け取ったとき、彼は背中に突き刺さる視線を感じた。
振りむく──黒服──サングラスを──かけた男がいた。彼が近寄ると男は理由もなく走りだす。彼は男を追った。追いかける──肩に──手を──伸ばす──彼が男の肩に──手を触れると──男は彼の手を──振り払った。
車両駐車禁止の道路標識の前。
違法駐車しているシルバーのベンツ。
男はその車に乗り込むと、猛スピードでその場から立ち去っていった。




