6-2
「あ……あのさ……年下なんだから……敬語とか使ってね」
恋人なのだから、どうでもいいはずなのだけど、この状況がとても気まずいものになり、つい、そのようなことを口走ってしまった。
「じゃあ……うーんと……恭司さん」
少し拗ねながら下をむいてそんなことをいうもんだから、僕はとても申し訳ない気分になって元のままでいいよと答えてしまう。
「もう──どっち・や・ねん──」
関西人が絶対に発音しないイントネーション。
僕はそんな風に答えるマキちゃんのことがとても可愛らしく思えてしまい、今更ながらに惚れているのは自分の方なのだと思い知らされてしまった。
*
商店街を歩く。そこらじゅう、みんなして店仕舞いしていた。
代わりに浴衣姿の若い男女たちが足早に通りを急ぐ。
祭りの準備はもう既にできあがっている。
そんな雰囲気。流石に今日はストリートで演奏している人間はひとりも見当たらない。
そういえば美樹さんは一体どこの誰とこの花火を見るのだろうか?──あんなことがあってから、意図的に彼女のことを避けるようになっていた。
年下の僕のことを揶揄っているのかもしれないし、彼女に対する僕の恋心をわかっていて、それを安易に弄んでいるのではないのかとさえ疑ってしまう……
それでも──逢いたい──などといわれると──僕は美樹さんのこと──で、頭がいっぱいになって──しまい──避けているはず──なのに──僕の心──が、それを許さない──美樹さんを拒むこと──なんて、できなかった──そのことを──おめおめと会いに行く僕の行動原理を──マキちゃんに対する──不貞行為で──あるかのように思ってしまっていた……




