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夏の或る夜の夢の続き  作者: 横滑り木偶臣
第6章(花火と練乳・前編)
45/84

6-1

〔Side.B 三人称〕


『お前の*****秘密****を*****知っている*****』


 郵便受け──開けると──そこには週刊誌から切り取られた文字の羅列──葉書にはこの街から──さっとと出て行け──と、記されている。彼はぞっとした。10年前の奇行について知っている人間が存在する。


 その日から街を歩くたびに、やたらと他人の視線が気になった。


 なぜ、このタイミングなのだ──帰郷して、すでに3年もの月日が流れていた。


 脅迫状をあえて、この時期に送りつけてくる犯人の意図がわからない。


 あえて今年を選んだ理由はなんだ──???──彼は考えを巡らす。


 もしかすると、今年の異常行動は10年前の奇行を実行した人間をおびきだす罠なのか──


 理由はわからないが、自分たちのことを探している人間がいる。




〔Side.A 一人称〕


 その日は街全体がどこか浮き足立っていた。年に一度の花火大会が川沿いで催されるからだ。この町に住む老若男女、全ての人間がはしゃいでしまうもんだから、どこもかしこも、もう仕事どころではなかった。


 僕はマキちゃんを誘って、花火を見に行くことにした。この陰鬱な気持ちも少しは晴れやかなものに変わるかもしれない。


「ねえ、恭司は、犬と猫と、どっちが好き?」


 とても唐突なその質問に少し意地悪をしてやろうと思い──犬だニャーと答えた。犬が好きといっているのに、ニャーと答えているのだから本当は猫が好きなわけなのだが、その答えに彼女は目をまん丸くして──キョトンとしたまま──暫く──沈黙が続いた。


「へえ……そうなんだ……やっぱり変わってるね」


 彼女のその回答は揶揄っている僕の行為を軽く斜めに躱しさり、そのようなボケがまるでなかったかのようにしてしまった。


 げんに……犬だニャーと答えたから変わっているのか……犬好きを装っているから変わっているのか……まったく……訳がわからないじゃないか……。さらには……見てはいけないものを見てしまった……そんな表情で……僕のことを覗き込んできた……

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