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夏の或る夜の夢の続き  作者: 横滑り木偶臣
第5章(PSYCHOTHERAPY)
44/84

5-8

「なんだよ。自警団なんて無鉄砲だ、みたいな顔しやがって」三島がいった。「俺たちは無駄に動きまわったりしないぜ。こういうのは、能率的に作業しなきゃならねえんだよ。あてはある、8月14日だ」


 三島がそういうと、一瞬にしてマーコの顔色が曇った。


 その日は思いだしたくない日だったから。それは8月の蒸し暑い夏の日の夜だった。


 帰宅途中の帰り道にあっけなく死んでしまった。タクシーも拾わずに、家にむかって歩いていたときのことだ。


 医者の公式見解は持病の悪化となっている。


 次の日の夜にはもうお通夜で、葬儀の後にさっさと火葬されてしまった。もうすぐ8月14日。マーコの父親の命日だ。


「なんだよ、しけた顔しやがって」三島はそういって、僕とマーコのグラスにビールを注ぐ。「中学の時みたいにパアっといこうぜ。パアっと。あの時、俺様のおかげで相当盛りあがっただろうが!」


 こいつに、一曲歌わせたことを、僕は今になって相当後悔している……


 そういえば、こいつなら、僕たちのラストソングを誰が歌ったのか覚えているかもしれない。僕は三島にそのことを尋ねた。


「嗚呼──あれなあ──」調子よく答えていた三島の表情が固まる。殺気。振り返ると、なぜか、マーコが睨みつけていた。「俺さあ、歌い終わったら、クラスの女子どもにサイン攻めにあっちまってよう。正直、最後の曲は聞いてなかったんだよな……」

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