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〔Side.A 一人称〕
僕は乾杯の合図も待たずに、ビールを一気に飲み干した。喉を伝ってアルコールが身体に流れ込んでいく。こんな暑苦しい日にこの男に呼びだされて、ある意味不快だった……
「お前、相変わらず、モテない感じだな」僕のすぐ横、ハゲ頭の三島圭吾がいった。ほっといてくれ。
「焼き鳥一丁!」店のマスターが雑に焼き鳥の皿を置く。場所はココナッツ。「なんだ、文句でもあんのか、この野郎!」
この店の常連ではないマーコは、あまりにも雑な接客と汚すぎる店の外装に唖然とした表情──それでもビールは口元に運んでる。
ユースケの奴はサボり、昔から三島とはソリがあわないのだ。
僕はついさっき、三島にもらった名刺に目をやる。
古物商。
商店街の副会長もやってるみたいだ。
「今年の変態は酷いな」三島がいった。「風評被害で商店街の売り上げもダウンしている」
「なんで、毎年のことなのに、今年だけ風評被害受けてんだよ。いつものことだろうが!」とマーコ。
「夏祭りに変態が出てから、なんの影響なんだか売り上げガタ落ちなんだよ。これで花火の日に出やがったら、街の経済にもえらい影響する」
「君んとこは関係なさそうだけどな」僕はいった。「古物商も変態の影響をこうむるのか?」
「俺様はインターネットで手広くやってんかんよ」三島がいった。「影響ってほどのものはないな。けど、自分たちの街が変質者どもに汚されてるわけだからよう。頭にくる。今、商店街の連中で自警団を作るって話になってんだわ」
物騒だなとマーコがいい、なんでそうなる、と僕は腹を抱えて転げそうになる。
「なにもしないよりマシだろ。警察なんぞ、あてになんないぜ、本当によう」
バカ過ぎる……僕がそう思ったことが顔に出てしまったのだろう……




