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夏の或る夜の夢の続き  作者: 横滑り木偶臣
第4章(ストリートから愛を込めて)
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4-6

 僕は運転免許を持っていないので、仕方なく保険証を提示した。目線を警官の方へむける。たまたま、手帳の中身が目についた。


 折りたたまれた濃い焦茶色のその手帳には、ポリスとアルファベット表記。巡査・中井春彦。虹色に光るホログラムの旭日章の後に、階級・氏名・証票番号が明朝体で表記されている。


 ポケットに警察手帳をしまうと警官がいった。


「まあ、特になにかあるわけじゃないんだけど」警官は保険証を確認すると僕に返す。「最近なにかと物騒でしょう。もう、こんな時間だしねえ」例の変態どものことだと思う。「若いからって気をつけなよ!……それにここ、許可おりてないでしょう?」


「すいません…………」と、僕は頭をさげた。


 ストリートでの演奏は無許可でやっている。


 警官の説明によると、近隣住民から苦情も出ているらしい。


「あまり、うるさくいいたくないんだけどさ」訝しげな表情で僕たちを見ている。「被害者が出てからだと、こっちもマズいわけですよ」


 僕はマキちゃんを確認。ネイビードットのキャミソールにヘージュのショートパンツ。特に代わり映えしない服装だと思った。


 警察組織から見ると僕たちは不審者のような格好をしているのだろうか……


「で、さあ、知ってると思うけど、変質者の目撃情報を探ってるわけよ、こっちは……」


「嗚呼……あの……例年のヤツですね……」


「たぶん、知らないだろうなあ、て、思ったんだけど、こっちもポイント稼がなきゃあ、上司に大目玉食らう立場なんだよねえ……そういうわけで、なんか知らない?」


 僕にとっても他人事ではない。


 だけど、それを一番最初に始めた人間のひとりが、目の前にいる自分だとは口が裂けてもいえない……


 怯えている自分の内面を、この警官に見透かされないように、僕は平静を装った。


「知らないですねえ……噂では……神事の模倣らしいですけど……」


 言い伝え。それはどこの街にもある都市伝説だった。


 鉈を持った鬼が巫女を追いかける。


 この街の恒例の祭祀だ。巫女は捕まると次の年には鬼の役回りを演じなければならない。そのことを警官に伝えると、

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