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店の中央にぼんと陣取っているのは、ビートルズのレコード盤でアビィ・ロード──ジャケットのなかのポールはひとりだけ裸足で、右手には煙草を持っている。
ジョンは神父。リンゴは葬儀屋。ポールは死体。ジョージは墓堀人。
フォルクスワーゲンのナンバープレートは281Fと縁起が悪い。
ジョンとジョージはもう死んでしまった。
けれどポールとリンゴはしぶとく生き残っている。
「あ、この人、女の敵だよね──」と、背後から声が聞こえる。
振り返るとそこにはマキがいた。なんてことをいうんだ……
マキはポールを指差して、ぽっぺを鋭く尖らせている。
こんな小娘にそんなことをいわれる所以はポールの側にはないはずなのだが──女の敵などといってしまう──彼女の過去には一体なにがあったのだろう──??
「……ポールが嫌いなの?」
曲は好きだよ──といって彼女は目線をはずした。
ジョンの方が好き──そういって戯けてみせた。
妻を愛してるといっておいてたびたびの再婚──女の敵なのかもしれない──だけど、ジョンは許せてポールは許せない女の子の心理が彼には到底理解できなかった。
「僕はジョージが好きなんだ」
「へえ、変わってる」
変わっているとまったく認めるつもりはなかった。
メンバーのなかで一番ルックスがいいのはジョージだし音楽的にも優れている。ダメダメなギターも愛くるしい。
そんな戸惑いを完全にスルーして、マキは笑顔で微笑んでいた。彼自身もその笑顔を見ていると、そんなことはどうでもいいことのように考えてしまうのだ。
本人曰く、彼女のビートルズ好きは父親からの影響であるらしい。そういえばあの娘も、ビートルズがとても好きだった。




