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「おい、なんか、裸のカップルが浮かんどるでえ」「心中か?」「水死体やで!」「いんや生きとるであれは!」「乳繰りあっとんじゃないぺか?」「ほんとだ、死んでねえや」「おら、おったまげた!」「なんか、めんこいねーちゃんいるぺ!」「俺にも見せろや!」「ほなら撮影するがな!」
そこには田舎の不良グループ。ヤンキーの考えることは理解できない。
洗濯板で擦りあげたように髪を逆立てた金髪の男が、脱ぎ捨てられた美樹さんのビキニを拾いあげ駄犬みたいにその匂いを嗅いでいる。
不快に笑い、舐めまわすようないやらしい視線を美樹さんの方に送った。美樹さんは僕の背後に隠れた。
「なに隠れとんじゃ、こん畜生が!」「裸のねーちゃん、もっと見せろや!」「ほら、そんなひょろひょろとつるんどらんで、こっち来てわしらと遊ばんねえ!」「あがってこんと、酷い目にあわすぞ!」
笑いながら男のひとりがナイフを取りだす。僕の海パンを拾いあげると、無造作に縦方向に切り裂いた。
「小便できるようにしたったで!」「アホか、後ろ側やないけ!」「ほんまじゃ、これじゃあ、ウンコだだ漏れじゃ!」「がははははは!」
笑い声。男のひとりがスマートフォンをかざした。あんなので撮影されたら……
「ねえ、恭司くん!」後ろから……美樹さんの柔らかなおっぱい……つまりは押しつけられている……と、いうより……肩に美樹さんの全体重が強引に……。「潜るよ!」
なにが起こったのか、一瞬理解できなかった。僕の身体は再び海中に沈み込む。美樹さんが僕の足を引きずりおろしてる。つまり、沈んでる。だけど、あわてた所為で、僕は空気を吐きだしてしまい──僕は死ぬ?──さっきは、簡単に死を受け入れたのに、今は、まだ死にたくなかった。死にたくない。空気。必要だ。苦しい。浮力に反して沈む沈む沈む。美樹さんにしがみついた。肌の感触。柔肌。表面は柔らかだがところどころ筋肉質で固い。両足を無様にバタつかせた。空気がないと死ぬ。死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ。でも、今、浮きあがったら……僕だけでなく……美樹さんがどうなるかわからない……だけど、空気が……もう駄目だ……僕はここで死ぬのだろうか?……目を開けると美樹さんが、




