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夏の或る夜の夢の続き  作者: 横滑り木偶臣
第3章(L・O・V・E・い・関・係)
25/84

3-7

〔Side.B 三人称〕


「新興住宅地に横断歩道があるわな」


「嗚呼、アビィ・ロードですね」


 アビィ・ロード?──と君江が首を傾げる。


 正式名称ではないが通称としてまかり通っている。ある意味、毎年恒例の例の奇行のおかげなのかもしれない。


「私はそんな風にいわないからね。そこに昔、この街の神社があったんだよ」


「知りませんでした。神社って、神崎グループの……」


 神崎の名前を出した瞬間、君枝はギロリと睨みを利かせた。彼は言葉を飲み込む。この街では決して、神崎の名を口に出してはいけない決まりなのだ。


「神崎の神社かい……あれは駄目だ。インチキだしモグリだよ」


「はあ……」


「奴らは戦後の混乱期にこの街に進出してきた。所謂、山師だからね。関わらない方がいいよ」


 そういうと君枝はどこからともなく街周辺の地図を取りだしてきた。所々に線とバツ印が赤インクで記されていた。


「この地図を見ておくれ、首塚と神社跡を含む10個のバツ印のうち七つを繋ぐと北斗七星の形になるはずだ」


「あっ、本当ですね」


「北斗七星の形になっているところは、昔の裏街道ってところかね」満面の笑みを浮かべる。君枝は得意げに説明を続けた。「今じゃ、獣道みたいになっているけどね。10個のバツ印の箇所には、今でも地蔵菩薩が配置されている。東京にも確か七つの神社の近くに、さらに三つ神社があるはずだわねえ。それと同じ具合だよ」


「お、なるほどですね」彼にはさっぱり結論が見えてこない。「でも、これだけじゃ、なにがなんだかわけがわからないですね」


「なにいってるんだよ。確り目を見開いて観察してみな。残りの三つのバツ印を繋ぐと三角形になるだろ。この中に将門公の胴体はある。いわばお城だね。そして首は北斗七星の外側にある。つまりは首が侵入しないための城壁ってところだよ」


「そんな強引な……だいたい、本当に平将門の首だとどうやって証明するつもりなんですか?」


「しつこい男だね。そこんところは、本物だと認めないと話が進まないから、本物だと仮定して話を聞いてちょうだいな!」


「はあ……そうですか……」


 余りに科学的検証の余地がない。唯物論という観点を、小説家志望のこの司書は完全に排除してしまっているように思えた。


「結界が出来あがる。将門公の首と胴は決して繋がることはない」


「つまり、お地蔵さんの力でなんとかしたわけですか?」適当にいってみた。


「違うよ。地蔵菩薩は単なるダミー。人間の身体の中で10個あるパーツといったら、一つしかないでしょうが」


「なんですか……まさか……」


「ふふふ、指だよ」そういって君枝は不気味に笑った。

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