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「ここは裸体主義者の海じゃないですよ……警察に見つかったりしたら……」
「大丈夫だって、誰もこないから!」身体をひねって僕にそういう。なんの心配もないって表情。その一方で……重力に逆らった状態の美樹さんの両胸が露になってしまっていた。「恭司くんがなにを怖がってるのか私にはよくわからないな~」
「美樹さん?……正気ですか?」
「なにが? 私が裸になったこと? それとも、今からやってみせることの方なのかな?」
崖から飛び込もうとしてるから心配してくれてるの?──と美樹さんは僕にむかって意味深な表情をしてみせた。
でも、それは、青年誌のカラーページを飾るどのグラビアアイドルよりも最高の笑顔だった。そして、僕が、止めようと手をかざすよりも先に──
美しい放物線を描き宙を舞った──重力が彼女の身体を垂直方向に引き寄せる──次第に海の青さのなかに──美樹さんはゆっくりと吸い込まれていった。
やがて着水すると、円を描くように水しぶきがあがる。心配になり僕は覗き込んだ。なかなかあがってこない……
太陽に照らされる夏の終わりの海──そこから──群れからはぐれたイルカのように自由に泳ぎまわる彼女の肉体を僕の目は捉える。美樹さんは水面から浮きあがり──ターン──お尻──そのまま──気持ち良さそうに身体を反らし──仰向けになった。
浮力。
まるでフランス映画みたいに牧歌的な様だが、美樹さんの際どい箇所は僕の位置からでも充分丸見えだった……
「ねえ、見てないで恭司くんも飛び込みなよ」美樹さんがいった。「それとも、君はむっつり助平の童貞なの?」
「カメラがあるから入れません──」と僕はいった。本当はカナヅチだ……
「後ろに森があるでしょう──」気持ち良さそうに美樹さんは波の上で泳ぐ。「早くしなさい! 私にこれ以上恥かかさないで──」
そういうと顔を両手で覆った。乳首は丸見えなのにである……
僕は、その時、もう、やけになってしまって、森林に進んだ──そこには、
梟が巣でも作れそうな大きな樹洞があった。
そのなかにデジカメを放り込んだ。
夏の蝉が命を燃やすようにやかましくがなり立てている。僕の心境そのものだった。
もう、どうにでもなれ──走る──加速して崖にむかうと、
「ちょっと待って!」美樹さんの声が聞こえる。急ブレーキ。崖の下を覗き込んだ。「恭司くんも脱がないと駄目だよ。どう考えても、私だけ裸って不公平だと思わない?」
「え……」そこですか……もう、どうにでもなれ……
僕は海パンに手を当てて、一気に脱ぎ捨てた。




