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〔Side.A 一人称〕
僕らは崖の上にいた。浜辺から海岸に沿っていりくんだ道を登っていくとそこがこの崖。日傘をさしたアンニュイな表情の美樹さん。
撮影現場としては申し分ない。崖といっても断崖絶壁というわけではなくて、市民プールに行けば置いてある飛込み台ぐらいの高さしかなく、遊びで飛び込む奴らがよくいるという噂の場所だ。
道を隔てて背中側には森林が広がってる。
「さてと──」数枚のスナップショットを撮った後に美樹さんがいった。「いい天気だから飛び込みでもいたしますか!」
「え……どうして、そうなる訳ですか……」
「恭司くん、少しは空気を読めるようになった方がいいよ……このシチュエーションで男女が海に来て、やることといえば映画みたいに飛び込み以外ないはずだよ!」
なぜ……そうなる……大事なことなのでもう一度抗議したが、美樹さんは聞く耳を持たない。
「ねえ、ビビってないで少しは私に本気の恭司くんを見せてよ! まずは私がお手本をお見せしちゃいますからね!」
そういうと……なぜか……美樹さんは……肩ひもに手を当て……嗚呼……いとも簡単に解いてしまい……僕のものは窮屈な布切れのなかで今にも爆発しそうだ……まるで悪戯でもするかのように片方の手で胸元を覆い隠しながら……嗚呼……ビキニのトップスを剥ぎ取り……マジですか?……美樹さんの利き手から黒ビキニが落下する。
「ちょ……ちょっと……美樹さん……」と叫ぶ僕の動揺を物ともせず、
美樹さんは間髪入れずに今度は背中をむけて腰ひもを外し始めた。ボトムスを脱ぎ捨てる。背中から腰あたりまでを均一に隔てる一本の直線……
「流石にこれは撮らないでね……少しだけ恥ずかしいから……」
そういうと──背伸び──美樹さんは柔軟体操を始めた。産まれたままの美樹さんの姿に……僕はカメラを手にしたままなにもできずに固まってしまう。脱ぎだす意味が僕にはわからない。




