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〔Side.B 三人称〕
「君枝さん。本の返却と郷土資料の検索お願いします」
「熱心だね……でも、大方、その顔色だと上手くいってないんだろう?」
「まあ……遠からずですね……」
彼は街の図書館にいた。
目の前にいる司書の女性は遠藤君枝──小説家志望の彼女は休日を利用して長編ミステリを執筆しており、懲りずに30年間休まず新人賞に応募を続けている。
彼は何度か君江の小説を読む機会があったのだが──内容はうんざりするものばかりで辟易していた。
「相変わらずミステリ書いてるんですか?」
「まあ、ボチボチでね」君枝はため息をつきながらそういった。「で、なにについて調べているんだい?」
「それがですね……郷土資料っていっても……この街の夏祭りの起源についてなんですけど……昔は巫女さんを焼き殺したとか……」
なぜか、彼の頭のなかには磔にされた美樹のイメージ。
十字架に磔にされ串刺しにされていた。
「嗚呼……当たり前だけど、そういうのは郷土資料の本には記されていないよ」
「え……やっぱり……そうですか……」
疲労が一気に全身に伝達する。受付前の椅子に座り込むと、君江がたった今返却されたばかりの本のページを凄い勢いで追っていた。
「忘れ物だよ!」君江がいう。それは写真。「あんたボケてるのかい?」
こんなものをいつ挟んだのだろうか?──と、彼は思った。女性の写真と街の周辺地図の写真。君江は慣れた手つきで検索を続けていた。
「あったよ。まず、平将門公の首塚についての資料。あとはねえ──」
「嗚呼……あの、インチキのヤツですか……」
「なにいってんだよ、あれは本物だよ」と君江が勢い任せに捲し立てた。




