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夏の或る夜の夢の続き  作者: 横滑り木偶臣
第3章(L・O・V・E・い・関・係)
21/84

3-3

〔Side.B 三人称〕


「君枝さん。本の返却と郷土資料の検索お願いします」


「熱心だね……でも、大方、その顔色だと上手くいってないんだろう?」


「まあ……遠からずですね……」


 彼は街の図書館にいた。


 目の前にいる司書の女性は遠藤君枝──小説家志望の彼女は休日を利用して長編ミステリを執筆しており、懲りずに30年間休まず新人賞に応募を続けている。


 彼は何度か君江の小説を読む機会があったのだが──内容はうんざりするものばかりで辟易していた。


「相変わらずミステリ書いてるんですか?」


「まあ、ボチボチでね」君枝はため息をつきながらそういった。「で、なにについて調べているんだい?」


「それがですね……郷土資料っていっても……この街の夏祭りの起源についてなんですけど……昔は巫女さんを焼き殺したとか……」


 なぜか、彼の頭のなかには磔にされた美樹のイメージ。


 十字架に磔にされ串刺しにされていた。


「嗚呼……当たり前だけど、そういうのは郷土資料の本には記されていないよ」


「え……やっぱり……そうですか……」


 疲労が一気に全身に伝達する。受付前の椅子に座り込むと、君江がたった今返却されたばかりの本のページを凄い勢いで追っていた。


「忘れ物だよ!」君江がいう。それは写真。「あんたボケてるのかい?」


 こんなものをいつ挟んだのだろうか?──と、彼は思った。女性の写真と街の周辺地図の写真。君江は慣れた手つきで検索を続けていた。


「あったよ。まず、平将門公の首塚についての資料。あとはねえ──」


「嗚呼……あの、インチキのヤツですか……」


「なにいってんだよ、あれは本物だよ」と君江が勢い任せに捲し立てた。

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