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黒ビキニ。はち切れそうなぐらいにたわわな胸元が動きにあわせて踊ってる。
僕の手を握って微笑む。目がまわりそうだ。悩まし過ぎる表情。
美樹さんがいった。
「ねえ、恭司くんは泳がないの?」
「僕は撮影してますから……適当に泳いでください」
撮影を続けた。美樹さんのファンの為の会員制交流サイト。
そこにアップする為の写真。
勿論こういうのは会社の規約に触れる。コスプレイヤーであることが会社にばれると不味いのだそうだ。
次々とポーズを決めるいつもと違う入念なメイクの美樹さん。女性の印象はこうも変わるものだとは……
波が陸地に寄せて、また海の方角へ帰っていく。
僕はシャッターチャンスを逃さない。
波が押し寄せる渚を美樹さんはひとりで走り続けた。煩悩を払うかのようにカメラのボタンを押し続ける。
所有するデジカメが防水機能がないという事実以上に、僕がカナヅチでまともに10メートル程度も泳げないという真実を、絶対に美樹さんに知られるわけにはいかなかった。
「本当に泳がないつもり?」
「僕は美樹さんの専属カメラマンですから……」
僕がそういうと、面白くないって顔の表情で、
「ひとりじゃあ、詰まらないよ。ねえ、ここで泳いで。絶対に気持ちいいから──」
僕の手を引いて、美樹さんは波打ち際を走る。ファインダーを覗きながら、僕は美樹さんを見つめ続けた。夏の日差し以上に身体が熱い。
「美樹さん……待ってください……カメラが……」
美樹さんは僕を海のなかへ放り込もうとする。とっさに両腕をのばし、必死になってカメラが着水するのを防いだ。
ギリギリ──
デジタルカメラの機能停止という最悪の事態を避けることはできた。浅瀬だったことも幸いした。
「美樹さん。一体なにするんですか?!」
「へ・へ・へ」戯けた表情──純度100%の美樹さんの笑顔。エキセントリックなその表情に僕はまたしても心を奪われてしまう……
唖然……僕はなにもできなかった。そして海水が塩辛い。
「ねえ、恭司くんってさ……」美樹さんはそういうと、僕の一番敏感な箇所にその指を這わせた。「恭司くんって……絶対、カナヅチだよね」




