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その後も宴会の席では酒も話もはずみ、もうすっかり三人ともベロベロになっていた。話は再び、中学時代のバンドの話へ。
「ああいうやかましい曲ばかりやっていたから、俺たち相当浮いていたよな」
「田舎だからかな……ヴィジュアル系のバンドを聞きたがってた……」
「ああいうの大嫌いなんだよ……」
あの頃が一番、輝けていたような気がする──誰かがそういった。
一向に最後の曲を歌った人間を思いだすことはできなかった。
サッカー部のあいつだ。いや野球部のこいつだ。剣道部の人間に違いない。いやいやテニス部の輩だ。
結局、三人のうちの誰かが歌ったのだろうという結論に達した。そう三人は安易に結論づけていた。
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早いもので時計は夜の12時をまわっていた。隔てていた壁をすっかり取り払い、三人は長らく会っていなかったことがまるで嘘のようにさえ感じていた。
だけども3年間、なにもやってこなかった恭司に対し、店を切り盛りする学も一流企業で後輩を束ねる祐介も、どちらも非常に立派にうつっていた──なにもないのは自分だけだ──そう考えると、彼は自分のことがとても小さな人間のように思えてしまい、恥ずかしささえ感じてしまっていた。
店を出て別れ際、酔っぱらいの三人は抱きあった。
なぜだが涙が止まらなかった。家路を急ぐこの道には、街の灯りはないけれど、満月の光で足元は充分に明るかった。
けれども、なにか大切な約束を思いだせないでいる。彼はそんな気がしていた。