表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夏の或る夜の夢の続き  作者: 横滑り木偶臣
第2章(15歳の夏に三人が仕出かしたこと、そして……)
15/84

2-6

〔Side.A 一人称〕


 東京の高校に進学してから、ユースケとはまったく接点がなかった。


 やがて高校を卒業し、僕はアルバイトをしながらプロのミュージシャンを目指していた。けど、状況はなかなか好転していかなかった。


 僕は悪戦苦闘しながら、さまざまなバンドを渡り歩いた。だけど、上手くいかなかった。


 ユースケはというと──幾つかのバンドをかけ持ちしていたようだ──風の噂──ユースケの噂──普通に大学に通って、バイトをしながら彼女を作り、人生を面白おかしく過ごしているらしいユースケの噂話──圧倒的にギターが多くてドラムが少ないバンド人口のなかで要領のいいユースケが美味しい思いをしていても別に不思議なことではなかった。


 あいつのことだからどんなジャンルの音楽もそつなくこなしたんだろう。たとえ自分が感じないビートであっても、チヤホヤされるためなら上手くノリをあわせていたに違いない。


 ふたりの人生が交差することなど、もう二度とないはずだった。


 僕とユースケは、お互いにもう交わってはならなかったのだ。それは2月、ふたりが東京に出て来てもうすぐ7年目のこと──


     *


 学生たちにとって卒業の季節。東京の大学のサークルでは、卒業生を追いだす為のコンパが頻りにおこなわれていた。


 ユースケも例外なく、4年間の大学生活を締めくくる集大成のライブを迎えていた。そのライブに、なぜかサークル活動にまったく関係のない僕をあいつはゲストとして連れ込んだ。


「なにか最後に恭司と思い出を作りたくて」とユースケは電話越しにいった。


 そのときの僕の精神状態はかなり荒れ果てていた。


 プロになることなんて、とっくに諦めてしまっていた。


 社会に対するどうすることもできない憤り──自己嫌悪──黒い感情が──溢れだして止まらなかった──。けれど最後ぐらい……と思い、僕はステージに立つことにした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ