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〔Side.A 一人称〕
東京の高校に進学してから、ユースケとはまったく接点がなかった。
やがて高校を卒業し、僕はアルバイトをしながらプロのミュージシャンを目指していた。けど、状況はなかなか好転していかなかった。
僕は悪戦苦闘しながら、さまざまなバンドを渡り歩いた。だけど、上手くいかなかった。
ユースケはというと──幾つかのバンドをかけ持ちしていたようだ──風の噂──ユースケの噂──普通に大学に通って、バイトをしながら彼女を作り、人生を面白おかしく過ごしているらしいユースケの噂話──圧倒的にギターが多くてドラムが少ないバンド人口のなかで要領のいいユースケが美味しい思いをしていても別に不思議なことではなかった。
あいつのことだからどんなジャンルの音楽もそつなくこなしたんだろう。たとえ自分が感じないビートであっても、チヤホヤされるためなら上手くノリをあわせていたに違いない。
ふたりの人生が交差することなど、もう二度とないはずだった。
僕とユースケは、お互いにもう交わってはならなかったのだ。それは2月、ふたりが東京に出て来てもうすぐ7年目のこと──
*
学生たちにとって卒業の季節。東京の大学のサークルでは、卒業生を追いだす為のコンパが頻りにおこなわれていた。
ユースケも例外なく、4年間の大学生活を締めくくる集大成のライブを迎えていた。そのライブに、なぜかサークル活動にまったく関係のない僕をあいつはゲストとして連れ込んだ。
「なにか最後に恭司と思い出を作りたくて」とユースケは電話越しにいった。
そのときの僕の精神状態はかなり荒れ果てていた。
プロになることなんて、とっくに諦めてしまっていた。
社会に対するどうすることもできない憤り──自己嫌悪──黒い感情が──溢れだして止まらなかった──。けれど最後ぐらい……と思い、僕はステージに立つことにした。