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〔Side.B 三人称〕
大盛りの生ジョッキを飲み干しながら、軽食が運ばれてくるまでの間、おつまみのピーナッツを三人はたいらげた。
学はこの店の常連らしく、三人でこんなに騒いでいるのに、自然と店の雰囲気の中に溶け込んでしまっている。
「お前、あれからどうしてた?」祐介がいった。
一瞬会話が途切れた。
あれからどうしていた──と聞かれたところで、どうしたもこうしたもなかった。彼にはなにもないのだから。
学が店や子育てに奮闘していることも、祐介が夜遅くまで仕事が大変なことも、彼にはなにも実感できはしなかった。
「悪かったよ。レスポールカスタム……」
「レスポールカスタム?」学は首を傾げる。「なんだよそれ?」
なにも答えない。気まずい沈黙を破るように障子が開く。
「焼き鳥一丁!」店の亭主が雑に焼き鳥の皿を置く。「なんだ、文句でもあんのか、この野郎!」
「あるわけないじゃない。おやっさんの料理にケチつける人間がどこにいるってんだよ。それより、ビールお代わり持ってきて!」
こんな風に返すのはきっとお決まりなんだろう。口は悪いがこの亭主の焼き鳥は美味いんだと、学が説明する。
「冷凍食品をチンしたんじゃなく、ガスできちっと焼いてっからな」
料理が運ばれてくると、また同じように自然と会話ははずんでいった。三人が話すことといえば15歳の夏のことばかりであるが、祐介との間には話さなければならないことが他にもあった。