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夏の或る夜の夢の続き  作者: 横滑り木偶臣
第2章(15歳の夏に三人が仕出かしたこと、そして……)
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2-2

「おー、久しぶりだな。恭司、元気か?」


 店の扉を開けると、少し小太りで、それでいて確りとした筋肉質の男が大きな声で話しかけた。男につられてこちら側も陽気な気分にならざるを得ない。隣からすらっとした黒ぶち眼鏡の男もやって来る。


「三人がそろうのはいつぶりだっけな?」


 三人は中学の同級生──一緒にバンドをやっていた間柄でもある。ガッチリした方がベース。黒ぶち眼鏡の方がドラムを担当していた。


 筋肉質の男の名は亀山学──同級生からはマーコと呼ばれていた。


 学のことをマーコと呼ぶのはどこからどう見ても似つかわしくないが、本人は意外とこのニックネームを気に入っているようだ。がはははは、と笑い飛ばす。


「お前ら以外にマーコって呼ばれたことねえな」


 高校を卒業してから蕎麦屋に弟子入りし、今じゃ立派に自分の店を持ちあわせている。3年前に結婚して、子供もひとりいるらしい。


「お前、式に来ないからな──」


 3年前も三人がそろうチャンスはあったのだが、とても人を祝う気にはなれず、彼は学の結婚式には出席しなかった。


「わからなくはないけど出ろよ」黒ぶち眼鏡の男がいった。


 彼の名前は新田祐介──友人はこの人物のことをユースケと呼んでいる。もはやあだ名でもなんでもない。大学を卒業して就職先は大手の某有名企業だ。


 15歳のときの三人の夢は、プロになって武道館を満員にすることだったが、今それぞれに別々の道を歩んでいた。


「悪かったよ。すまなかった──」こんな風に彼が素直に謝れるようになったのは、ここ最近のことだった。


 目立ちたがり屋の恭司。


 しっかり者の学。


 なんとなく誘われてドラムを叩いていた祐介。


 三人のバンドが解散してから、もう10年もの月日が流れていた。なにやら感傷的な気持ちがこみあげてくる。店の奥にある畳の個室に移動すると学がいった。

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