プロローグ -学生騎士-
2度目の学園襲撃の翌日、ミラとハークはバイト先であるカフェ・マリンスノウを訪れた。
この日は2人ともシフトは入っていなかったが、マスターの安否と店の状態が気になり顔を出しに来ていた。
「マスター、おはようございます」
「大丈夫でしたか?」
レプトルの大群による襲撃があった翌日、死傷者こそ出なかったものの、あちこちで暴れ回ったレプトルたちのお陰で街はいたるところで被害を受けていた。
特に中心街は嵐が通った後のような有様で、店々は倒れた看板や割れた窓ガラスの掃除に追われていた。
「私は大丈夫だ。それより、2人ともなぜここにいる?」
「「え?」」
「大事な試合の前だろう」
「それは、まあ…」
こんな状況だが、今朝、星宙魔導学園理事長の不知火月華からトーナメントは予定通り行うと発表があった。
曰く、こんな状況だからこそ、らしい。
各国の魔導学園も警備を強化する中、ここ星宙学園都市ではお祭りが行われるのだ。
「行ってきなさい」
「でも…」
「ここに店を構えてから、多くの生徒たちを見てきた。君たちは全力を出さずに納得できるタイプじゃないだろう?」
「…はい!」
「ありがとうございます!」
ミラとハークは顔を見合わせて頷くと、我先にと店を飛び出していった。
それを見送ったマスターはふっと少しだけ笑みを浮かべると、また片付けへと戻っていった。