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番号交換
「へえー、ニートなんですか」
ヒロミが目を丸くして言った。
「カッコ悪い?」
「うん、ちょっと…」
ヒロミが半分冗談で、微笑みながら言った。
「でも、絵、とか描けるっていいな」
「そう?」
「今、描けます?」
「うん、いいよ…」
僕はヒロミを描いてあげた。
「…私、こんなにかわいくないですよー」
ヒロミは嬉しそうに言った。
「もらっていいですか?」
「もちろん」
「わー、ありがとう。うれしいな」
僕らは、店を出て、外を歩いた。
「でも、カオリって、バイトに熱中してるから、デートの時間とかないでしょ?」
「うん。今日みたいなこと、結構あるね」
「私、ユウジさんのこと、好きになっちゃったかも…」
「え?」
「冗談、冗談!」
ヒロミが笑った。
「ケータイの番号、教えてもらえますか?」
「いいよ」
僕らは番号を交換した。
「じゃあ…」
別れ際、ヒロミが僕の頬に、軽くキスした。
「えへ」
ヒロミが僕の前からいなくなった。
「えっ?」
これからどうなっちゃうんだろう?僕は、期待とカオリへの申し訳なさで、一人、混乱していた。