1/1
出逢い Ⅰ
出逢い
ツクツクボーシ、ツクツクボーシ、……
「暑いなぁ…」
呟きながら、汗がにじみでてきた額を腕で拭う。
腰あたりまで伸びた長い黒髪が、汗で首にはりつく。
(朝からツクツクボウシか…まだまだ夏は終わりそうにないのに…)
未だ強い日差しで照り付ける太陽を睨みつける。
昔から夏は苦手だ。
「比奈子ー!」
聞きなれた元気の良い声に振り返る。
顎の下あたりで切り揃えられた茶色のショートヘアの女の子が、こちらにぶんぶんと
元気よく手を振りながら駆けてきている。
大宮 由美。
私と同じく橘高校2年生だが、ぱっちりとした瞳に幼げな顔、おまけに小柄なことも
加わって、私と同級生に見られることは少ない。