表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

平和の魔王

作者: TEXTER(現代視覚文化研究会 - 奈良高専)

現代視覚文化研究会で書いた最初の小説作品です。

勇者は、いよいよ魔王の城の前に立っていた。

勇者は、もうこれ以上無いくらいの自信に満ち溢れた表情である。

(ここで魔王を倒し、僕は真の勇者になるのだ。世界の民を助けるんだ。)

勇者は、仲間に一声掛け、4人で揃って魔王城の中に入っていくのだった。


魔王城の中は薄暗かった。

「【ライト】…はい、明るくなった」

以心伝心のようなタイミングで、魔術師が部屋を明るくした。

魔法【ライト】は、戦闘時には暗闇状態を解除するだけの、たいした効果を持たない魔法であるが、フィールドやダンジョンが暗い場合は明るくして進みやすくできる、微妙に便利な魔法である。

勇者たちは、明るくなった城の中をゆっくりと用心深く歩き続けた。


しかし、モンスターも特に出ることはなく、あっさりと魔王の部屋についてしまった。

拍子抜けしたようであったが、それでも勇者たちは帰らないし、特に目標が変わるわけでもない。

無論、鍵はかかっていなかった。勇者たちはノックした後、ゆっくりと部屋の中へと足を踏み入れた。


部屋は理路整然と、かなり丁寧に整えてあり、人間界の応接室を彷彿とさせた。

その中央奥の机に、魔王は仕事中という雰囲気を漂わせつつ、座っていた。

「貴様が魔王かぁ!いざ勝負!」

勇者は魔王のデスクに突っ込んでいったが、魔王は見かけによらないスピードで回避した。

見かけ速度、勇者の倍。普通の人間なら逃げるであろう。

しかし4人は逃げるどころか、武器を構えなおし、息を整えた。

魔王は、少し乱れた服装を、几帳面に直し、4人を見つめた。

二手に分かれた5人は、火花でも飛ばすかのような鋭い目つきでにらみ合い、そして戦闘がスタートした。


勇者はいきなりSPを使う「正義の一撃」を繰り出した。魔王は回避したが、その表情からは先ほどの余裕が消えている。

魔王は、とりあえず回復系を先につぶそうと思い、僧侶に大ダメージの個人用魔法【レーザーショット】を繰り出した。

僧侶は瀕死の状態になり、まともに立つことすらできない状態になった。システム的な言い方をすると、残りHP=1みたいなものだ。

魔王はその【レーザーショット】を連投し、とりあえず僧侶を倒した。

「おい…ずるいぞ!」

「倒されにきたのはおまえらだろ!不法侵入もしやがって!

ゲームだとでも思ったか!」

魔王は健気にがんばる自称勇者を嗤った。

(俺こそが最強なんだ。世界を支配できるのも、俺なんだ!)

魔王は自分の意思と決意を再確認した。


それから5分。

魔王の集中僧侶狙い撃ち作戦により、いよいよ復活アイテムもそこを突いたころである。

勇者は体力よりも精神力を消耗していた。

(あの魔王…何かが今までと違う…)

勇者は異変を感じた。

(なんか……頭がよくなった?)


今までも十分魔王は強かった。

でも今の魔王は少し違う。その能力を、いかに効率よく繰り出すか。それを心得ているような感じである。


勇者は初めて敗北を認識した。そして、退却を考えた。

確かに、この世界はゲームではない。戦闘中に抜けることも可能である。

勇者は「一時退却!」と叫んだ。


結論、扉は魔王が閉めていた。

勇者はもはや涙目になっていた。

今の勇者にはもはや、戦う【勇気】なんてなかった。


でも魔王には逃がす気はない。

魔王はここで勇者を倒すつもりなのだ。

それは互いの心理からいうと当然のことであり、事前に予想できるものである。

魔王は、残ったパーティーを次々と倒していった。



……

……………………



いつまで寝ていたろう、

勇者は目覚めると、

ベッドの上だった。


勇者は起き上がり、周囲の様子を確認した。

他に3つのベッドがあり、そこに他のメンバーが寝ている。

そして、部屋の真ん中に魔王が佇んでいた。


「魔王…っ」


勇者はベッドから出て、剣を構えようとしたら、剣を失っていることに気がついた。

勇者は真っ青になった。完全に世界が支配される、そう思った。

呆然と立ち尽くすしかなかった。


魔王は初めて会った時と変わらない、笑い顔でもなければ戦いの顔でもなく、真面目な表情であった。

しかしどこか、和んだような表情である。

勇者はパクパクと口を動かす。


「すまない…」


その一言、それは勇者から放たれた言葉ではなかった。

「すこし熱くなりすぎた…」

魔王は勇者に向けて言葉を選んだ。


無論、勇者にとっては不意打ち過ぎる行動であった。

「すまないで済むかよ…こっちは殺されかけたんだぞ!?

悔いろ!そして自分を封印するんだ!」


魔王は表情のひとつも変えずに彼の話を聞いていたが、聞き終わるとおもむろに口を開いた。

「勇者、あんたは偏見を持ってるよ……」

魔王は寂しそうに、少し笑った。

「なにが偏見だというのだ。魔王が世界を支配しようとしているのを阻止する、それの何が悪いのだ!」

勇者は、自身の信念を声高に宣言した。


「それだよ…魔王を悪いと思っていることだよ。」

勇者は愕然とした。勇者の行動理念は悪を制覇することだ。

「そもそも、勇者のやろうとしていることだって同じじゃないか」

「違う!僕のしようとしていることは、世の中を平和にすることだ!」


「暴力でか?」


勇者は足の力が抜け、倒れこんだ。

その勇者を、危険も顧みず抱きとめ、ベッドに戻す魔王。


「暴力で世界を平和にするなら、俺も勇者もやっていることは同じじゃないか。

ただ、世間でのイメージがいいか悪いか。それだけの話だ…」


勇者は、何か気づいたような表情になったが、認めたくない様子であった。

「だから、協力しないか?」


勇者は顔を上げた。


「魔物だって出てくるのに、ここで強い人同士が戦っていても、戦力の無駄だろ?」


勇者は魔王を見つめた。

しかし睨んでいない。勇者は真の目的を思い出した。

そして勇者は魔王と協力することが最善であることを理解した。


「魔王…長い間誤解していてすまない。

お詫びといっては何だが、世界中の人々に説明して回るよ。

魔王は敵なんかじゃない…

ただ、世界をを平和にしたかっただけなのだ。」


魔王は、わかってくれてうれしい、といわんばかりにゆっくりと頷き、扉を開けた。

吹き抜ける風が、今では清清しい。

魔王と勇者は共に外に出た。

日光が眩しい。


魔王と勇者は、仲良く歩いて魔王城を外出した。



後ろに、魔王を理解しない3人を置いて。

続編は書きますが、一話完結作品に近いため、書きあがりましたらURLを貼ります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] なかなかおもしろかったです。友達に見せたところ、感想を言いたいということで、下に載せておきます。 素晴らしい作品だった。 戦闘描写は少し説明不足ではあったがよくある話をここまで練れたもの…
2015/04/28 08:27 退会済み
管理
[良い点] 流石姉さん! とても面白かったです! あ、申し遅れました。猫好きの人です。 途中、意図的に後ろの三人から意識を逸れさせてますよね。そのせいで、最後の一行で驚かされました! 凄く楽しめました…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ