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カレーと風呂

「ポイント節約のため、今日は野営なのだ」


「キャンプみたいで楽しみー」


《楽観的だな、2人とも夜間は自然が厳しいぞ……って聞こえていないな、こりゃ》


 日が沈み、辺りが暗くなる。ビスタと魔法合戦した東の大地で野営をする。リリーは炎魔法で明かりを着けて、タツヤがリュックサックから食べ物や食器とリリーに買ってもらった包丁を取り出す。フィンネルが注意しているが、2人は夕御飯作りに夢中。


「カレーライスを作りたいと思いますー」


「かれー、らいす?」


「カレーライスは地球で人気な料理の1つだよ、僕の大好物なんだー」


 タツヤは調理のために動き出す。じゃがいも、ニンジン、玉ねぎ、豚肉を包丁で刻む。鍋を用意してタツヤ特製のルーを煮込むなか、そこにスパイスをちょっぴり入れる。お玉で混ぜることで良い匂いが漂う。リュックサックから冷凍してあったご飯の塊を取り出し、きっちり温めてからルーをかける。


「はい、どうぞー」


「美味しそうなのだ〜♪」


《これはまた見たことない料理だな》


「いただきまーす」


「いただきますなのだ!」


 タツヤ特製カレーライスの完成。見た目だけでも美味しそうでリリーは涎が出そうになる。フィンネルも見たことない料理に興味津々だ。すっかりお馴染みになった食事の挨拶をして食べ始める。


「美味しいのだ〜♪」


「リリーさんの笑顔が戻って良かったー」


「……ありがとうなのだ」


 リリーがカレーライスを頬張るなか、タツヤの気遣いに頬を染める。照れ隠しにどんどん食べる。


「フィンネルさんには、これどうぞ」


《………はっ?》


「魔力が食事と言ってたから、魔草に味を付けてみましたー」


 カレーライスを眺めていたフィンネルへ、タツヤはトロフ初料理を渡した。地球のサラダをイメージした料理だが、フィンネルは精霊の自分に料理があるとは思わず、きょとんとしている。


《………い、いただきます》


「どうですか?」


《…………う、うまいな》


「良かったー♪」


 地球では食べられる野草があり、トロフでは魔草という。タツヤは初心者魔法本を読んで、魔草は草に魔力が貯まっていることが分かって、とりあえず草に向かってドレッシングを混ぜただけだった。しかし、何故か魔草に味が付いた。


「フィンネル、どうだったのだ?」


《信じられん。魔力に味付けなど、ヴァルラスいやトロフで聞いたことない》


 同じようにきょとんとしていたリリーが、こっそりフィンネルに尋ねる。499年生きてきたフィンネルすら知らない初めてのことだった。魔草はどこでも生えているが、好んで食べるものではない。改めて、タツヤの料理センスに驚く。




「リリーさん、トロフにはお風呂って有るのー?」


「お風呂? 城に住む貴族や王様が入っている贅沢なものなのだ。それに作るのに膨大な魔力が必要なのだ」


「そうなんだー。でも、簡単に作れる。この本を見て考えたよー」


 賑やかで驚きの連続の夕御飯が終わり、タツヤはリリーに気になっていたお風呂のことを聞く。リリー曰く、お風呂は地位が高い人が入るという。タツヤが再びギルドで貰った初心者魔法本で考えた。


「どうやるのだ?」


「土魔法で枠を作って、水魔法で水を生み、風魔法で枠を綺麗にして、炎魔法で水を温めると……簡単露天風呂の完成ー」


《確かに聞いた内容では不可能ではないな……》


 タツヤの考えは、リリーを毎回わくわくさせてくれる。今回もまた面白そうだ。タツヤが初心者魔法本を見せながら説明していく。フィンネルもまた魔法の使い方や出来るイメージに納得する。


「やってみるのだ」


《リリー、お前の水・土・風の魔法は炎に比べると、我輩が制御していないから崩れやすい。失敗しても良いから慎重にな》


「分かった。慎重にやるのだ」


 リリーはタツヤの言葉をイメージしながら魔法を用意。フィンネルがリリーの魔法を注意して見守る。炎魔法が得意なリリーは、他の魔法はあまり得意ではない。最初に土魔法、次に風魔法、途中に水魔法と行い、最後に炎魔法を無事に終わらせた。


「出来たのだ!」


「すごい、リリーさん!」


《リリー、よくやった!》


 リリーを褒めるタツヤとフィンネル。


「さっそく入ろー」


「何だか恥ずかしいのだ」


「恥ずかしいねー」


《人払いはしてある。2人ともゆっくりするが良いぞ》


 今晩限りの簡易露天風呂。タツヤとリリーは入浴しており、恥ずかしがっている。土壁で見えないだけでお互いの声は聞こえる。フィンネルが精霊の力で人払いしているおかげで、ゆっくりと入れる。


「リリーさん、あの綺麗な星はー?」


 北の夜空で一際輝いている星がある。


「あれがチキュウなのだ。北が分からない時に探すと方角が分かるのだ」


「北極星みたいー。……地球の僕や父さんに神様、元気かなー……」


 地球はトロフでも星として見えていた。ちょっぴり寂しさを感じるタツヤだった。




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