ギルドとパニック
「ここがギルドなのだ」
午後、タツヤ達が昼御飯を食べて、やって来たのはスペードタウンの最北端にあるギルド。ギルドの建物は、次の街ダイヤタウンとの間にある洞窟に出てくるモンスターから街を守るために最北端にある。
《ギルドというのは名称で、その中身は冒険者・商業・武具・鍛冶と様々な職業をサポート出来るようになっている。今回、タツヤが登録するのは冒険者だな》
「冒険者は便利なのだ。モンスターを倒した場合など、報酬が貰えるのだ」
《武具やポイント、高ランクだと地位や土地も貰える》
「すごーい」
フィンネルとリリーの説明を聞くタツヤ。冒険者はヴァルラスに居るモンスターを倒すことで報酬を得られる。その報酬の内容にびっくり。さっそくギルドに3人は入って行く。
「冒険者ギルドにようこそ。ご新規の方ですか?」
「こんにちは、新規は僕ですー」
「私は既に登録済みなのだ」
タツヤはギルドの受付嬢に挨拶。隣にいるリリーにも尋ねられたが、ギルドカードを見せる。
「こちらが冒険者登録の書類になります」
「分かりましたー」
「タツヤ、パーティー欄には私とフィンネルを書くのだ」
「分かったー」
タツヤは受付嬢が出した書類を書いていく。幸い日本語でも通じるようで順調に書いていき、パーティー欄ではリリーが書いてくれた。完成した書類には『リリー・ハーリング』『フィンネル』として提出した。それを見た受付嬢は驚いた。
「ハーリングさん!? いつもお世話になっております!」
「ギルドがお世話になっているのは私の両親なのだ。私は関係ないのだ」
興奮する受付嬢に対して、あっさりリリーは受け流す。散々言われてきたことで、うんざりしている。
「登録完了ー。リリーさん、後でお礼に美味しい料理ごちそうするねー♪」
「本当!? ありがとうなのだ♪ あ、タツヤの魔力量を「大変だーーーーっ!」慌ただしいのだ」
うんざりしたリリーの表情を見たタツヤは、笑顔になれる料理のレシピを考えて伝えた。すると、リリーの表情が輝いた。タツヤの料理は本当に美味しいので、タツヤが美味しいと言う料理を想像するだけで上機嫌になった。
リリーは、ギルドに来たもう1つの理由を思い出す。タツヤの魔力量を測ってもらおうとしたところ、突然ギルドの入口で大声が聞こえてきた。
「レッドスパイダーの群れが無の洞窟に現れた!」
「何!?」「マジかよ!」「初心者キラーの猛毒蜘蛛が!?」「しかも群れ!」「ヤバいぞ!」
「皆、落ち着きたまえ」
「ギルドマスター!?」
冒険者が叫んだところ、ギルドにいた冒険者らしき人間達が次々と話していく。レッドスパイダーは初心者キラーで、猛毒を持っているから倒しにくいモンスター。ギルド内が混乱するなか、ギルドの責任者ギルドマスターが現れる。
「無の洞窟に小規模の迷宮が発見された。冒険者達を集め、住民へ注意をしたまえ。しばらく無の洞窟はギルドが許可した以外の者は立ち入り禁止とする」
「了解」「イエッサー!」「俺はパーティーの仲間に伝える」「私は様子を見てくる」「情報拡散は任せろ!」
ギルドマスターの指示によって、動き出す冒険者達。
「私達には関係ない話だったのだ。でも、タツヤの魔力量が測れなくなったのだ」
「別に良いよー。それより、あの掲示板が気になるー」
《ふむ、依頼や注意情報、それに犯罪者リストが載ってあるな》
ギルドマスターの指示で先ほど居た受付嬢も移動して忙しいそうにしている。魔力量より掲示板に興味があるタツヤ。リリーとフィンネルも確認してみる。
『グリーンビーのハチミツ……怒りやすい蜂から極上のハチミツを採ってきてほしい。怪我は保障しません。依頼人より』
『ブラックドラゴンの飛来……怪しい黒い影がレインボーマウンテンで目撃。周囲の森林を焼き付くした。冒険者より』
『詐欺師ハンドルス……この男を見たらギルドへ報告。口車に乗せられると、いつの間にかポイントを失っている。風の魔法が得意な人間。ギルドより』
「《「どれも物騒だなーーー」》」
思わずハモった3人であった。タツヤは掲示板の下にあるテーブルから無料の初心者魔法本を幾つか貰って、ギルドを出る。
「タツヤのギルドカードも出来たから、次は先生に会いに行くのだ」
「先生?」
「先生は魔法学校で魔法を教えている人。私やビスタが在学しているのだ。先生に旅することを早く伝えたいけど、先生がいる魔法学校はダイヤタウン、少し遠いから明日にするのだ」
「それじゃあ、夕御飯を作るねー」
「楽しみなのだ♪」
リリーがお世話になっている魔法の先生。次の目的地を決めてタツヤの美味しい夕御飯が楽しみなリリーだった。