番外編
「海ー!」
「なのだー!」
とある日のトロフ。透き通った青空。さんさんと照りつく太陽。白い雲が乱れる強い風。足元から伝わる柔らかい砂浜。
タツヤ達は海に来ていた。キングタウンの北東にあるリゾート地、クイーンタウン。海の上にある街で、海中が街の一部になっている。
「たっくん、こっちよ〜」
「タツヤ、久しぶりだな」
「ポポさん、トドさん。席取り、ありがとうございまーす」
リリーの姉ポポ、兄トドが先に用意してくれた。大きな赤いパラソルが目印。
「女の子は肌が大切よ〜」
「ありがとなのだ」
女性陣は魔法で地球でいう日焼け止めクリームを体に塗り終えた。
「リリー、水着似合っているよー」
「ありがとなのだ♪ タツヤもかっこいいのだ」
リリーは小さい体だが、女性特有の膨らみがとても大きい。髪と同じ赤いビキニの水着によって、より強調して深い谷間が出来ている。タツヤに褒められて照れている。
「ポポさんは、何かすごーい」
「ありがと〜」
リリーと同じ大きい胸に、背が高い。すらっとした足でモデルみたい。つばの広い麦わら帽子、白いビキニのポポ。意外と純粋、顔が真っ赤になる。
「さあ、泳ぐぜ!」
「浮き輪ー♪」
「私もなのだ♪」
「って、お前ら泳げなかったの!?」
トドが海に向かって走るなか、タツヤとリリーはお互いに浮き輪を持って走っていた。2人ともカナヅチだった。
「海と言えば、スイカ割りー」
「俺に任せろ!」
泳いだ後はスイカ割り。トドは鍛え抜かれた筋肉でスイカを壊そうとする。
「トド兄、目隠しをしてないのだ」
「目隠し?」
「スイカ割りは目隠しが必要よ〜」
リリーがトドに指摘。ポポがタオルを用意する。
「ここか?」
「もっと右ー」
「そこか?」
「左にズレたのだ」
「ここだな!」
「あとすこし前〜」
「あー、面倒くせえ! ここにしてやる、オラァッ!」
目隠ししたトドは、スイカから少し離れた場所から始める。タツヤ、リリー、ポポの指示に従うが、途中から分からなくなってしまう。そこで前に向かっておもいっきり棒を振り下ろした。
「残念、外れたのだ」
「でも、風圧で割れたー」
「いただきましょう〜」
「美味しいのだ♪」
スイカから離れた場所で振り下ろした棒。しかし、風圧によってスイカが切れた。特に驚くこともなく、タツヤ達はスイカを食べ始める。
「そこの姉ちゃん、暇かい?」
「暇ですよ〜。でも、たっくんがいますから〜」
「誰? もしかしてナンパー?」
「何だ、このガキ」
スイカを食べ終えて休憩していると、ナンパその1が現れる。ポポが軽く避けて、タツヤをアピールする。
「そっちの姉ちゃん、俺達と一緒に遊ぼうぜ」
「困るわ〜、助けてたっくん〜」
「ついでに、こっちの妹も連れて行こうぜ。可愛がってやるよ」
ナンパその2とその3も現れて、ポポを連れて行こうとして、その3はリリーにまで手を出そうとする。
「むー。えいっ!」
「どわぁ!?」
「リリーをナンパするのは許さないー」
「タツヤー」
タツヤは風の魔力でナンパその3を吹き飛ばす。流石にリリーを連れて行こうとするのは、ムッとした。リリーはタツヤの後ろに隠れる。
「コイツはブラックドラゴンを退けた実力者だ」
「トド遅い〜」
「「「すいませんでしたーーーーっ!!」」」
トドもやって来て、タツヤの体験を語る。前は筋肉男トド、後ろは謎の実力者タツヤ。ナンパ達は謝りながら逃げて行った。
「料理で、だけどねー」
「さあ、改めて泳ぎましょう〜」
タツヤはブラックドラゴン事件を振り返り、ポポは何事もなかったように泳ぎ始める。
「海の家と言えば、焼きそばー」
タツヤが買ってきた。焼きそばっぽいのはトロフにもあった。
「デザート、プルーティを作ったよー」
「「!?」」
「ありがとうなのだ!」
タツヤがプルーティを用意した。何故かポポとトドが驚くなか、リリーは食べる気満々。
「ちょっと待って〜! 何でプルーティを作れるの〜?」
「どうしたのー?」
「早く食べたいのだ、いただきますなのだ」
「あっ〜! リリー、変なのよ〜」
「あそこの作り方は企業秘密。盗んだ……にしては、この温かさは本物だ」
スペードタウンで売っていたプルーティ。ポポが調べて、トドも疑ってしまうほど、完璧度が高い。リリーは待ちきれず、食べてしまう。
「盗むなんてしなーい。ちゃんと見て覚えたよー」
「「覚えた!?」」
「タツヤはすごいのだ。私が貸したヴァルラスの定番料理本を覚えて作ってくれたのだ!」
「すごいってレベルじゃないわよ〜!」
タツヤがあっさり答え、リリーが自慢する。ポポとトドは、タツヤの実力を改めて思い知らされるのであった。
「楽しかったね」
「また来たいのだ」
のんびりバカンスは終わり。タツヤとリリーは再び来る約束をして、クイーンタウンの海から帰った。
ここまで読んでくださって、ありがとうございました。いつか、この小説の続きを書けたらいいなー、と思っています。最後は主人公とヒロイン紹介。
タツヤ・マエダ
主人公。神様の頼みで地球からトロフに来た少年。ゆったり、まったり、のほほんとしたマイペースな性格。料理を作る、食べる、食べられることが大好き。夢は世界中の料理を食べ歩くこと。身長154cmで高校生16歳にしては低身長だが、本人はあまり気にしていない。
口調に『ー』を付ける。
リリー・ハーリング
ヒロイン。赤髪で炎の魔法使い。16歳。タツヤとは間違って召喚したと勘違いしたのが出会い。身長154cmで小さいが、胸はかなり大きめで羨望と嫉妬を周りから見られている。夢はトロフの世界を旅するること。ハーリング商会の末っ子。兄と姉がいる。
口調は語尾に『なのだ』を付ける。