温泉とデザート
「いきなり料理対決はビックリしたけど、バルボッサ家の従業員全員、注目!」
「何ですか、お嬢様?」
「明日からあなた達に休暇として、ハートタウンへ慰安旅行に行こう!」
「「「「えっ?」」」」
料理対決の余韻があるなか、ビスタの休暇宣言に驚くメイドや従業員達。
「父様、母様には伝えているから問題無し。たまには皆で羽を伸ばしてね!」
「お嬢様、立派になられて」
「リリー達も今日はここで泊まって。明日は温泉よ!」
ビスタの心遣いに感謝するメイド。そして、タツヤ達も同行することになった。
「タツヤ様、リリー達、コッドン様。お乗りください」
「ありがとー」
「ふかふかなのだ」
「けっ、贅沢だぜ」
翌日、慰安旅行として、バルボッサ家の人々と一緒にクローバータウンを出る。執事のセバスが用意した馬車に乗り、快適で着いたのはハートタウン。
小さな田舎町ハートタウンは、クローバータウンと首都キングタウンの間にある温泉街として有名。
「良い景色、さっそく入るのだ!」
「リリー、体を洗いなさいよ」
「お嬢様、癒されます」
リリーは温泉に着くと、直ぐに入ってしまう。ビスタを収めて、メイドものんびり羽を伸ばす。他の従業員達も楽しんでいる。
「タツヤが考えたドラム缶風呂とは、また違った感じなのだー」
「何そのドラム缶って?」
「秘密ーなのだー」
リリーは、タツヤと一緒に楽しんだドラム缶風呂を思い出す。ドラム缶を知らないビスタが問いつめるが、タツヤのように語尾を伸ばして内緒にするのだった。
「タツヤ、天ぷらという料理は素晴らしい。簡単で美味しいのはありがたい」
「アンダーソンさんの料理もすごかったよー。今度、調理方法を教えてー」
「ったく、温泉の時ぐれえ、料理を忘れろよぉ」
さっそく温泉に入るが、タツヤと料理長アンダーソンは、お互いの料理について語りあっている。コッドンは熱い湯に慣れていないのか逆上せかけている。
「タツヤ様は光魔法を使われたことはありますか?」
「ううんー。4属性しか知らない。光魔法って何ー?」
「光魔法は複数の魔法陣を重ね合わせると、別の魔法が出来ます。浮遊、召喚、消失、転移などあります」
「こうー?」
「よ、よせ〜〜!」
セバスが光魔法を教えていると、タツヤが魔法陣を加えてしまい、男女を分ける白い壁が転移して消えてしまう。コッドンの叫びも虚しく、女性陣と目が合ってしまう。
「「「きゃあああ〜〜〜っ!?」」」
「この覗き!」
「お、俺達悪くね〜〜」
ビスタとメイド、女性従業員の桶攻撃に男性陣は倒されてしまう。
「タ、タツヤ……」
「リ、リリーさん……ぷしゅーーーー」
「タツヤ、しっかりするのだ〜〜っ!」
リリーも桶を投げようとしたが、あろうことか目の前はタツヤだった。お互いに戸惑ってしまい、タツヤはリリーの体を全部見てしまって、顔が真っ赤になって倒れた。リリーは沈んだタツヤを急いで救うのであった。
「タツヤ、ゆっくり休むのだ」
「ごめんなさい、リリーさん……。その、お風呂……」
「げ、元気になってから考えるのだ」
「う、うん」
タツヤは布団で寝かされていた。リリーがそよ風程度の弱い風魔法で看病している。お風呂場でのことは、後回しと顔が真っ赤な2人は結論づける。
「男性陣への判決、ショケイ」
「理不尽だ!」
「仕方ありません」
「光魔法を教えておりました、私が悪いです」
コッドンは抵抗しながら魔法でお仕置きされていた。アンダーソンは無抵抗、セバスも一番の原因として無抵抗でお仕置き中。
「タツヤへの判決。女子全員にスペシャルデザートを作るように、いえ、作ってください」
「皆に迷惑かけたのに……、そんなので良いのー?」
「「「良いんです!」」」
一方、タツヤへのお仕置きはデザート。しかもスペシャル。困惑するタツヤだが、女性陣の団結力はすごかった。タツヤの未知なる料理、きっとデザートも素晴らしいと予想、確信している。
「うーん、スペシャルかー。…………ケーキ?」
タツヤは寝ながらデザートを考える。地球で有名なデザート、ケーキを思いついたと同時に、ぐっすり眠るのであった。
「昨日はごめんなさい。お詫びにデザート作りまーす」
夜、タツヤは温泉宿の厨房を特別に借りる。リュックサックからケーキの材料を取り出して、メレンゲなどを使ってケーキを作る。
「どーぞ」
「美味しいのだ♪」
「何これ、美味い!?」
「予想以上の美味しさ!」
タツヤの用意したケーキは女性陣に大好評で、夕御飯は盛り上がった。しかし、その夜カロリーを取りすぎて、あらゆる女性部屋から悲鳴があったのは別の話。