火花と料理対決
「タツヤ、どうしたのだ!?」
「アンダーソンまで!?」
「お嬢様、どうやらタツヤ様とアンダーソンの料理人魂が火花を散ったようです」
リリーとビスタが焦るなか、メイドは2人の様子を説明する。
「君の包丁を見せてもらおうか」
「これ!」
アンダーソンから聞かれて、タツヤはリリーに買ってもらった料理包丁を見せる。
「ふむ。市場で販売されている一般の商品だな。しかし、輝きが違う」
「アンダーソンさんのも見せてー」
「なっ、貴様!」
包丁は料理人の魂。これを見れば、どんな人間かトップクラスの料理人だと見抜ける。アンダーソンは数々の包丁を見てきたが、タツヤの包丁が最高に輝きを放っていることを見抜く。
今度は自分の番と言わんばかりのタツヤの態度に、側にいた副料理長が苛立つ。
「黙ってろ、副料理長。タツヤ、これだ」
「むー。すっごい高そうな包丁。でも、毎日手入れしてあるー」
アンダーソンも使っている包丁を見せる。タツヤは父親が使っていたような高級料理包丁と分かる。しかも、鋭い切れ味と輝きが安定していることに驚く。
「……………」
「……………」
お互いの料理包丁を返して無言が続く。
「参りましたー」
「ギリギリだったな」
「決着が着きましたね」
タツヤが敗北を認めて、アンダーソンが辛勝を感じる。メイドから見てもギリギリの戦いだった。互いの健闘を握手で終わろうとすると、いきなり副料理長が叫んでくる。
「ちびっこ、料理長に認めて貰うなど100年早い! 貴様など俺が相手だ!」
「ちびっこじゃない、タツヤー」
「お客様の前で失礼です、副料理長」
「副料理長がタツヤに料理対決!?」
しかし、この熱い戦いを理解出来なかった副料理長がタツヤに勝負を挑む。それをメイドが叱って、ビスタが驚く。
「タツヤ様、失礼しました。副料理長の戯れ言ですから断っても大丈夫ですよ」
「そうなのだ。タツヤの料理は私が一番美味しいと分かっているのだ」
「ありがとー、メイドさん、リリーさん。でも、料理対決って久しぶりだから、ウズウズしてるのー。頑張る!」
メイドはタツヤに頭を下げる。お客様に失礼なことを言うのは失格、ましてやビスタの友人。リリーもタツヤの美味しい料理を知っているから、その料理を対決に使うなんて嫌。しかし、タツヤは逆に燃えている。地球では父親と食べ比べをしていたからだ。
「審査は料理長アンダーソン、お嬢様、この私メイドが行います。」
「よろしくー」
「フン!」
厨房へ移動した一同は、料理対決を審査する人を決める。タツヤが副料理長に挨拶するが無視される。
「先攻は副料理長、調理開始!」
「高級食材の高級部分のみを使う、これこそが究極の美味……完成!」
対決する共通の材料はバルボッサ家にある食材。しかも一般家庭では買いにくい高級食材ばかりだ。副料理長はより高級部分のみを使って料理を完成させる。地球の高級洋食料理フルコース並み、勝利を確信する副料理長。
「タツヤ、どうしたのだ?」
「もったいなーい」
「はっ?」
やる気満々だったタツヤが、いつも通りになっていることに気付くリリー。副料理長が捨てた食材のゴミ。しかし、ゴミと言うには使える部分が余り過ぎている。タツヤは地球の名言を言う。
「せっかく用意してもらったけど、僕はこれを使うねー」
「副料理長のゴミ!?」
「馬鹿め、ゴミで何が出来る」
「…………………」
タツヤは自分用のキッチンに置いてある食材より、副料理長に捨てられてしまったゴミを漁る。メイドが驚き、タツヤの行動を鼻で笑う副料理長に対して、料理長は真剣な眼差しで見つめる。
「ホワイトマグロの骨はスープの元。ブラックライオンの肉は煮込む。果物は絞ってジュースにして隠し味」
「美味しそうなのだ」
「出来た! ヴァルラス食材てんこ盛りのお鍋ー」
「馬鹿な……ゴミから料理に!?」
タツヤはゴミと呼ばれた食材を次々に調理していく。すると、たくさんあったゴミは一気に無くなり料理に変わっていく。その光景にリリーは食べたくて仕方ない様子。タツヤは皆で食べる鍋にした。副料理長が驚く。
「「「審査!」」」
「美味しいのだ♪」
メイド、ビスタ、アンダーソンは副料理長とタツヤの料理を食べ比べる。ちなみにリリーは既にタツヤの料理を別で貰っている。
「珍しい部位のお肉だからコラーゲンたっぷりだよー」
「タツヤ、コラーゲンって何なのだ?」
「お肌がすべすべーになる成分」
「「「「その話、詳しく!」」」」
「のほぉーーー」
タツヤがコラーゲンについて説明すると、この場にいた女性陣に囲まれる。あまりの勢いに悲鳴をあげるタツヤ。
「勝負あり! 勝者、タツヤ様!」
「どうだ、タツヤ。この家の料理長を継ぐ気はあるか?」
「アンダーソン!?」
高級食材をより美味しく作り上げたタツヤの勝利。アンダーソンが本気で後継者を頼んでいることにメイドが驚く。
「ごめんなさい。この世界にある食材を全部見たいからー」
「見た後でもいいぞ」
「ありがとう、考えておくねー」
「タツヤって大物ね……」
「何だか誇らしいのだ」
アンダーソンからの頼みを断るタツヤ。世界の食材を知りたい気持ちが分かるアンダーソンは、いつでも良いと伝えてタツヤも了承する。ビスタが呆れ、リリーは嬉しい。
「あっ、副料理長は従業員に格下げね。しばらく1から料理の修行よろしく!」
「Noooooo〜〜〜〜〜〜!?」
ちゃっかりビスタは副料理長に制裁を与える。料理対決は終わった。




