ポポと貴族
「何でポポ姉がここにいるのだ?」
「何でって、アリスから荷物を貰うためよ〜」
クローバータウンの小さな格安の宿。リリーはポポに詰め寄っている。アリス先生から届ける荷物はリリーの姉ポポ宛てだった。
「リリーさん、その人誰ー?」
「私の姉さん、ポポ姉なのだ」
「よろしくね〜、えっと君は?」
「タツヤです、よろしくー」
タツヤはリリーにポポのことを聞く。ポポはリリーの姉、黄色い髪で背が高くてリリーと同じくらい大きな胸。しかも足が長くてスタイルが良く見える。ポポは見たことないタツヤに聞く。ビスタとコッドンはアリスの魔法学園で知っていた。
「かわいい〜♪」
「わわっ」
「リリー、この子ちょ〜だい!」
タツヤの見た目や態度を見た瞬間、ポポはタツヤを簡単に持ち上げて抱きついた。タツヤが驚くなか、リリーにまさかの宣言。
「だ、駄目なのだ!」
「いいじゃ〜ん。ね、たっくん〜♪」
「たっくーん!?」
リリーが焦って混乱している間も、ポポはタツヤの柔らかい頬をすりすり自らの頬で擦っている。まさかの呼び名に流石のタツヤも驚いている。
「ポポ姉、タツヤは……その……私のパートナー、なのだ!」
「じゃあ、義弟ね。わたし、こんな弟が欲しかったのよ〜。トドとは全然違うわ〜♪」
「そろそろ降ろしてー」
リリーはタツヤとの関係を何とか考えて切り出す。すると、ポポはあっさりタツヤ貰う宣言を諦める。しかし、今度は義弟として貰う宣言。ちなみにトドはリリーの兄であり、ポポの弟である。ぐるぐる回るタツヤは、目が回って降ろして欲しい。
《相変わらずだな、ポポ》
「フィンネルおじさん、おひさ〜♪」
《おじさんと呼ぶな》
「499歳なんだから、おじいちゃんに変えよっかな〜」
《………もういい、おじさんで良いぞ》
フィンネルはポポについて知っている。リリー以上の行動派で誰に対しても我を通す。しかも、口では勝てない。
「そろそろ良いですか、ポポさん?」
「すっげー、マイペース振りだな」
「アリス先生から荷物を預かってきました。どうぞ」
置いてきぼりにされていたビスタ。呆れるコッドン。アリス先生から渡された荷物をポポに渡す。
「ありがとう〜。これは大切な商売道具なの。今日は皆疲れているみたいだし、ゆっくり休みなさい〜。ここの宿代は私の奢りよ〜」
「ありがとー」
「ありがとなのだ、ポポ姉」
ポポはアリスからの荷物を確認。メガモンスターとの戦いで疲れているタツヤ達を寝かせる。色んなことが詰まった1日が終わる。
「おはよう〜、リリー」
「おはよう……なのだ、ポポ姉……朝早く呼んで、眠いのだ……」
「リリーはどうしても最北端に行きたいのね〜」
「私の夢、なのだ」
「そういえば、最北端にはアレがあるのよね〜」
「……っ!」
翌朝、ポポがリリーを呼ぶ。いつも朝早いタツヤも魔力を使い過ぎて、ぐっすり眠っている。眠そうなリリーに対して、ポポは夢の話を聞く。そして、最北端にあるモノについて話すと、リリーの眠気が飛んだ。
「やっぱりね〜。リリーが昔から最北端、最北端って言っていたから何かと思ったけど〜」
「ポポ姉……タツヤには言わないでほしいのだ……」
「分かってわよ〜。悪い事じゃないし、女性の夢だもの〜♪」
「ありがとう……なのだ、ポポ姉」
リリーの夢は、最北端にあるモノだった。それは恥ずかしくてタツヤには言えない。それはポポも分かっており、温かく見守ると伝える。感謝するリリーだった。
「皆〜、首都でトドに会って、最北端がどんな場所なのか、しっかり聞いてから行くのよ〜」
「首都ー?」
「ここクローバータウンから次の街ハートタウン、それで首都キングタウンなのだ」
朝食を食べ、ポポが皆に説明。トドについてもリリーの兄と伝えて、最北端への道が険しい。タツヤは首都について尋ね、リリーがクローバータウンの次の次の街と答える。
「私は先にキングタウンに行くわ〜。たっくん、リリーをよろしくね〜」
「ポポ姉っ!」
「任されましたー」
ポポはアリスの荷物を持って宿から出ていく。ポポがタツヤに頼むと、リリーが恥ずかしがるなか、タツヤは敬礼して見送った。
「次はハートタウンか……。皆せっかくだから、私の家に来て」
「ビスタさんの家ー?」
「たまには皆で出掛けてみよっか!」
タツヤがクローバータウンで何をしようか考えていると、ビスタの家へ行くことになった。久しぶりの家へ思いをはせるビスタだった。
「ここがビスタさんのお家かー」
「相変わらず大きいのだ」
「スペードタウンにもあるけど、ここが一番大きいわ」
「けっ、下町の連中が見たら発狂だぜ」
「コッドン、一言多い」
「クローバータウンを任されている貴族様で充分すぎるだろ」
ビスタの生まれた家でもあり、クローバータウンで一番大きいバルボッサ家。タツヤとリリーが見上げるなか、コッドンが愚痴る。
「お帰りなさいませ、お嬢様」
「メイドさんだー」
「こちらは料理長のアンダーソン」
「よろしく」
ビスタの家に入ると、メイドが迎える。そこに料理長を加わって挨拶する。
「よろしくなのだ」
「よろ」
「………………」
「タツヤ、どうしたのだ?」
コッドンとリリーが挨拶するなか、タツヤは黙ったままだ。リリーが心配するなか、料理長も気付く。
「むっ」
「むー」
「「……………………出来る!」」
何故かタツヤと料理長アンダーソンが睨み合うのだった。