ボスと姉
「モンスターなのだ!?」
「リリー、落ち着いて。あれは人間を襲わないモンスターよ」
渋っていたコッドンも加わり、楽しく料理を食べていると、その匂いを頼りにモンスターが来た。リリーが魔法の杖と勘違いしてスプーンを構えている。しかし、ビスタは冷静でモンスターの正体を知っていた。
名はパープルドック。小型犬で集団で活動している。
「はい、どーぞ」
「タツヤ、普通モンスターに料理を渡さないわよ……」
「人類史上初だぜ……」
タツヤは人を襲わないモンスターと知るや、余っていたイノシン料理を皿に乗せて地面に置いた。パープルドッグはタツヤと料理を交互に見た後、イノシン肉を食べた。バクバクと食べる様子に、ビスタが呆れてコッドンが驚いている。
『グガアアアァァァ……』
「何だ!?」
料理も食べ終わって、食器の片付けをしていると、迷宮が揺れるような鳴き声が聞こえてきた。さっきまで人懐っこいモンスター達が逃げていく。
《何か来る! 気を付けろ、リリー、タツヤ!》
「戦闘準備!」
『グガァァァァァ!』
フィンネルがリリーとタツヤに注意を促す。ビスタが全員に掛け声をするなか、赤い大蛇メガレッドスネークが現れる。巨大ボスはメガモンスターという呼ばれている。
「この大きさ、迷宮のボスね!」
「迷宮はボスを倒せば出口が現れるのだ!」
「要はコイツを倒せば全部解決だな!」
「行くよー」
ビスタがメガモンスターを観察して、リリーは迷宮攻略を思い出し、コッドンはやる気充分、タツヤも魔法の杖を構える。
『グガァアアアアアッ!』
「よっと、水の初級魔法ウォーター・ボール」
「オラァ、土の初級魔法アース・ボール」
「「炎の初級魔法ヒート・アロー」」
メガレッドスネーク咆哮を放ちながら、長い体をうねりと動かし迫ってくる。ビスタは魔法の箒で空中から、コッドンは動きながら側面から攻撃。タツヤとリリーはタイミングぴったり、4属性で最も攻撃が高い炎で真正面から攻撃する。
「どんどん行くわよ、水の初級魔法ウォーター・アロー」
「動きにくくしてやる、土の初級魔法アース・アロー」
「タツヤ、眼を狙うのだ!」
「分かったー!」
「「炎の初級魔法ヒート・ボール」」
『クガアアアァァァァ!?』
空からは魔法の雨。地面は鋭く尖った土が盛り上がってくる。上と下に気を取られていると、前から2つの炎球が迫る。メガレッドスネークは混乱して大きい体で暴れ回る。
「コッドン、危ないわ!」
「しまった!」
空を飛ぶビスタが暴れ回るメガレッドスネークを見て、真横から尻尾がコッドンに襲いかかる。土魔法を地面に設置していて目線が下がっていたため、気付くのが遅れた。
「コッドン、伏せてー! 炎の中級魔法フレイム・キャノン」
『グガァアアアアァ!?』
「サンキュー、タツヤ! 倍返しだ、コラァ! 土の中級魔法ロック・キャノン」
『クガァァァアアアッ!?』
タツヤは尻尾に向かって炎の巨大球を発射。見事に尻尾に当たり、伏せるコッドンの上を通過する。コッドンはタツヤに感謝して、土の巨大球で攻撃。悲鳴をあげるメガレッドスネーク。
「フィンネル、私の風魔法を制御するのだ!」
《良かろう、存分にやれ!》
「タツヤ、一緒にやるのだ!」
「分かったー!」
リリーは苦手な風魔法を使用するのにフィンネルの精霊力を借りる。タツヤとリリーは、お互いに相手の手をギュッと握り、攻撃のタイミングを合わせていく。
『クガアアアァァァッ!』
「弱ってきてるわ、全員一斉攻撃!」
「「「「炎風水土の中級魔法スペシャル・キャノン」」」」
『クガアァァアアァッ!?』
動きが鈍くなったメガレッドスネークの隙を見て4人は1つに集結。タツヤが炎、リリーが風、ビスタが水、コッドンが土。4属性中級魔法の光線がそれぞれ放たれ、メガレッドスネークの口、顎、体、尻尾に直撃していく。
「決まったわ!」
『グガ…アアア……ァァァ………』
「やったのだ!」
「リリーさん、ハイタッチー」
「「いえーい」」
メガレッドスネークは力つきて倒れた。巨体が迷宮に揺らして、やがて収まる。タツヤとリリーが仲良くハイタッチするなか、メガモンスターを倒すと宝箱が現れる。
「よっしゃ、宝箱!」
「すごいわ!」
「リリーさん、もう一回ー」
「「いえーい」」
コッドンとビスタが確認する。宝箱には高級な魔宝石が入っていた。タツヤとリリーは、まだ宝箱に気づいておらず喜んでいる。
「出口!」
「迷宮を抜けると、すぐ近くに街があるのは助かるぜ」
「宿で早く休みたいのだ」
「到着ー。ん、誰かいるよ?」
ビスタが魔宝石を直して迷宮の出口に進む。ある程度歩くと、4人はクローバータウンに到着。リリーはメガモンスターと戦った後、くたくたである。女性がタツヤの目に入る。
「待ってたわよ〜、リリー♪」
「ポポ姉!?」
そこにはリリーの姉が立っていた。