コンビと交流
「リリーさん、トロフでは迷った時どうするのー?」
「え、えーと」
《基本的にはその場を動かない。水辺を探すぐらいだ》
「ありがとなのだ、フィンネル」
「ありがとー」
ただいま猛獣の森で迷っているタツヤ達。タツヤはリリーに対策を聞いてみるが、リリーも分かっていない。見かねたフィンネルが詳しく説明して、2人はお礼を言う。
「オイ、このままだと日が暮れてしまうぜ。面倒くせ」
「こんなモンスターだらけの場所で野宿は嫌よ」
「ん? 洞窟があるのだ」
コッドンとビスタが愚痴っていると、リリーは岩が積まれてる洞窟を見つけた。
「一番乗り! ふぅ、助かったぜ」
「ここならモンスターも来ないわ」
「2人とも早いのだ〜」
「ここは安全ー?」
素早く洞窟に向かって走るコッドンとビスタが安心するなか、足の遅いタツヤとリリーが追い付く。
『グルル』
「「「「へっ?」」」」
「ここって蛇さんのお家ー?」
『グガアアアアァァァァァァァ!』
「「「「ぎゃああーーーーーーーっ!」」」」
しかし、洞窟にはモンスターがいた。しかも、よりによってタツヤ達の後ろから。タツヤの質問に答えるかのように、青い大蛇が襲ってきた。4人は悲鳴をあげながら、バラバラに全力疾走で洞窟の奥に向かって散らばった。
「あれー」
「居ないのだ」
《はぐれてしまったようだな》
タツヤとリリー。ぽやぽやコンビとフィンネルの慣れ親しんだ組。
「何でアンタがいるのよ!」
「そりゃあ、こっちの台詞だぜ!」
ビスタとコッドン。ぎすぎすコンビの相性最悪組。
「「「「離ればなれになった!」」」」
洞窟で2つに別れてしまった。
「炎の初級魔法ヒート・アロー」
「炎の初級魔法ヒート・ボール」
タツヤとリリーは炎の魔法でモンスターを倒す。ここまで倒したのはブルーウルフ、シルバーイノシシ、イエロータイガー。
「ただの洞窟にしては……おかしいのだ……」
《確かに蛇の巣にしては、モンスターの種類が多いな》
「へ?」
「これは迷宮なのだ……」
「迷宮って、あのギルドマスターさんが言ってたところー?」
タツヤがモンスターを倒して食べられそうな部位を包丁で切っていると、周りを見ていたリリーが何かを考えてしまったのか小さく呟いた。フィンネルも同じように感じており、タツヤはよく分かっていない。
リリーはこの場所が迷宮だと言う。それはスペードタウンのギルドマスターが話していた内容と同じだった。
「タツヤ、実は私……迷宮に入ったことが無いのだ……」
「リリーさん?」
「怖いのだ……」
リリーが突然、タツヤに抱きついてきた。達也の左腕にムニュっと大きな胸を押し付けるほど、引っ付くリリーには余裕が無い。今まで魔法学園でモンスターと戦ったことはあったが、あくまでも訓練。本番は初めてで手足が震えている。
「リリーさん、そんなに近いと動きにくいよー」
「タツヤは薄情なのだ!」
「違うー。こうするのー」
しかし、タツヤはリリーを離そうとする。リリーは怒りそうになるが、タツヤはリリーの右手をギュッと左手で握る。
「これなら一緒に動けるし、怖くないー」
「ありがとうなのだ……」
同じ身長でもタツヤは男の子。温かくて大きな手に安心するリリーだった。
「はっ!」
一方、コッドンはモンスターが出たら、土魔法で倒しまくっていた。おかげでビスタは何もすることが無い。
「お前は足手まといだぜ」
「何ですって、あんたが勝手に全部倒しているからでしょう!」
コッドンの上から目線にカチンとするビスタ。
「だったら、どっちが先に倒すか勝負しようじゃねえか」
「望むところよ!」
こちらのコンビは、チームワークがバラバラの個人プレイ。
「良い臭いがするぜ」
「あら、本当」
しばらくコッドンとビスタが魔法で対決していると、ものすごく良い匂いがしてきた。しかし、ここは迷宮。あり得ないと考えるが、人の本能には逆らえなかった。
「ビスタさんー、コッドンー」
「やっぱりタツヤね」
「リリーさんと一緒に倒したイノシンを焼いてみましたー」
ビスタが見つけたのは、迷宮の端で料理を作るタツヤ。リリーも皿など並べ手伝っており、タツヤの料理が4人を合流させた。タツヤは手をぶんぶんと振って、ビスタとコッドンを迎える。フライパンにはイノシン肉が焼きあがっている。
「迷宮で料理とは何を考えてやがる、チビ」
「チビじゃない、タツヤー。体や魔力をいっぱい使って動いたら、お腹がすいたからー。コッドンの分もあるよー」
相変わらず、タツヤのことをチビというコッドン。タツヤは小さいことは気にしていないが、名前で呼んでもらいたい。さっそく料理を渡す。
「ケッ、誰がチビなんかの料理を……」
「「「いっただきまーす」」」
「聞けよ、オイッ!」
コッドンがタツヤの美味しそうな料理に渋っていると、タツヤとリリーとビスタは普通に食べ始める。思わずツッコミを入れるコッドン。
「コッドン、変な意地張っていると、すぐ無くなっちゃうわよ。リリーはタツヤの料理ファンだからね」
「美味しいのだ♪」
「このイノシン肉、美味しーい。今度は蒸してみようかなー」
「ナロォ、食わねえとは言ってねぇ! もぐもぐ……これは……」
ビスタは食べながら話す。リリーはすっかりタツヤの料理に夢中になっており、どんどん食べていく。その様子を幸せそうに見ているタツヤは、また別の作り方を考えてながらイノシン肉を頬張っている。
何だかムシャクシャしたコッドンは、目の前にあるイノシン肉を豪快に噛みちぎった。すると、目が全開に見開いた。
「コッドン、美味しい?」
「………旨かった。やるじゃねえか、タツヤ」
「どーういたしまして」
コッドンは今まで食べたことない味に満足してタツヤを認めた。タツヤは名前で呼ばれた以上に、美味しいと言われたことが嬉しかった。




