表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/20

本気と森

「ちょっと待つのだ! タツヤは魔法を知ったばかりの素人で魔法合戦なんて駄目なのだ!」


「チビ女は引っ込んでろ!」


 リリーがタツヤを庇う。しかし、コッドンの杖で飛ばされる。


「あうっ!」


「リリーさん!」


《リリー、大丈夫か?》


「ありがとなのだ、タツヤ、フィンネル」


 リリーは壁に当たる前にタツヤとフィンネルに助けてもらった。


「あんた、いい加減にしなさいよ!」


「次はお前か、貴族女」


「ビスタさん、下がって」


「タツヤ?」


「リリーさんは僕の恩人。女性に手を出すなって父さんに教わった。素人でも負けないよー!」


 ビスタが怒って杖を取り出すが、コッドンは怯んでいない。すると、タツヤがコッドンの前に立つ。身長差があって見上げながら宣戦布告。




「ここで魔法合戦を行ってください」


「行くぜ、チビ!」


「チビじゃない、タツヤですー」


 アリス先生に連れられて、魔法学園でもかなり広めの訓練室に来た。地球でいう体育館に近い。タツヤは学園用の杖を借りて、コッドンに挑む。


「大丈夫なの?」


「タツヤはギルド初心者魔法書を読んでいるのだ。幾つかの魔法は覚えているのだ」


 ビスタはタツヤが戦えるか心配する。それに対して、リリーはタツヤと一緒といる時間が長いので、タツヤの適応力を知っている。


「土の初級魔法アース・ボール」


「炎の初級魔法ヒート・アロー」


 コッドンは土魔法使い。タツヤはリリーとフィンネルに教わった炎魔法で対抗する。土と炎が激突するが、威力の弱いアロー型はボール型に負けてしまう。


「ニッ、相性が悪かったな。土魔法は炎魔法に有利だぜ」


「んー、魔法合戦の勝敗は相手の杖を地面に落としたら良いから関係ないよー」


「口だけは回るチビだな!」


 図に乗るコッドンに、タツヤはルールで対抗する。怒りの沸点が低いコッドンは更に土魔法を放ってくる。


「チビじゃない、タツヤー。炎の初級魔法ヒート・アロー」


「下手くそはアローばっかりだな」


「タツヤは最近魔法を知ったばかりなのだ! 流石に許さないのだ!」


「リリー、落ち着いて!」


《タツヤを信じろ!》


「あのチビ女が相手だとお前も大変だな、鬱陶しくてよ!」


 タツヤはアロー型で杖を落とそうと考える。コッドンのタツヤへの屈辱にリリーは怒って飛び出しそうで、ビスタとフィンネルが必死に抑える。コッドンは挑発を越えて、リリーの悪口を言い始める。


「む、こうなったら」


「ま、まさか……」


「伏せるのだ!」


「魔力全開! 炎の初級魔法ヒート・ボール」


 リリーを馬鹿にされて非常に珍しくカチンときたタツヤ。学園用の杖が真っ赤に光って、炎のボール型を放った。しかも、自らの意志で魔力を全て使う。

 すると、学園用の杖はタツヤの魔力に耐えきれず、折れるどころか粉砕した。その光景を見たリリーとビスタは、タツヤの前回を思い出して地面に伏せる。


「ヘン! そんなノロマ魔法、消えな! 土の中級魔法ロック・キャノン」


「コッドン君、逃げなさい!」


「何っ!? どわあああぁぁぁぁぁぁっ!」


 恐ろしいほど魔力が込められた炎球はゆっくり進んでいく。大したこと無いと判断したコッドンは、土の中級魔法で破壊しようとするが、いとも簡単に土の塊は砕かれてしまう。アリス先生が注意するが間に合わず、もろに当たる。


「全くタツヤ君、やりすぎですよ。土の上級魔法グランド・ウォール」


「危なかったのだ……タツヤ!」


「すごい、先生!」


 アリス先生は訓練室すら壊そうとする炎球に対して、土の上級魔法で相殺させた。リリーはタツヤの元へ、ビスタは先生に興奮する。


「タツヤ、しっかりするのだ!」


「ごめん、リリーさん。魔力が空っぽで体が動かないー」


「炎の上級魔法ボルケーノ・ストライク並みの凄まじい威力ですね。コッドン君、あなたの負けです」


「チッ、分かったぜ」


「コッドン、よろしくー」


 リリーは魔力が空っぽのタツヤを心配する。アリス先生は、ぼろぼろのコッドンに魔法合戦の決着を伝える。タツヤの放った魔法は上級魔法クラスで、コッドンの杖を落としていた。約束通り、コッドンがタツヤ達の旅に加わる。

 地球人のタツヤ。商人娘のリリー。貴族のビスタ。留年危機のコッドン。賑やかで不思議なパーティーが誕生した。




「皆さん、気をつけてね」


「行ってきまーす」


 翌日、アリス先生が見送る。昨日は、魔法合戦後、たくさんの魔法の特訓をした。特にタツヤは杖、箒など練習した。一応、箒は飛べるようにはなったが、付け焼き刃のため基本的にはリリーの後ろ。


「迷ったぜ」


「迷ったー」


「迷ったのだ」


「迷ったわ」


 ダイヤタウンを出て30分後。クローバータウンへの途中にある猛獣の森に入ったのは良かったが、同じ景色の繰り返し。どこにいるか分からなくなって、入り口も分からなくなった。


「空を飛ぶか?」


「ここの空は魔力が渦を巻いているのだ。箒が壊れちゃうのだ」


「つまり、外からの助けも来ないね」


「助けてー」


 でこぼこパーティーの初陣。いきなりの挫折。タツヤの虚しい救援の声が猛獣の森に響くのであった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ