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第2話:君の声

バチン!

「また居眠り?こんなに寝てるんじゃあ、家では随分とお勉強頑張ってるんでしょうね。」


クラス中が笑いでどよめく。僕はそんな中で意識を鮮明に取り戻し、徐々に教科書一冊分に叩かれた後頭部も痛んできた。

“今日は特に痛いな”

そう思いつつも、表情は裏腹ににこやかに笑ってみせた。

隣の女子はまだ笑っている。

クラスで一人ぐらいこんな生徒がいないとつまらないだろうと、自分を正当化しながら羞恥心をかき消していく。



そのあと、僕は職員室に呼ばれた。

その時のコーヒーの匂いと、今運ばれて来たコーヒーの匂いとが重なり合って、僕はそのコーヒーに懐かしさだけを感じながらゆっくりと飲んでいく。

苦手なブラックにしたのは、余計な思いを受け入れたくなかったから。

隣に座っていた老夫婦にもコーヒーが運ばれて来た。

お互いに砂糖とミルクを交換し合い、世間話を微笑みながらしている。そんな幸せの形を真横で目の当たりにしながら、僕は最後の一杯を飲みほした。


この異空間での時間の流れは早く、僕がここにいる理由を徐々に無くしていく。

会計を済ました時も、さっきと変わらず太陽は地面をジリジリと照らしていた。


そして僕はまた歩き出す--。


セミの鳴き声が僕の背中に迫って来るような気がして、僕はより一層早歩きになった。

そんないつもと変わらない日常の中に、彼女の声は聞こえてきた。


「ねぇヨシ!頑張ってる?」



あの暑い夏の日に、君の声は確かに僕の元へと届いて来た。

あの時、確かに君は僕の目の前にいて、その瞬間に僕の前にある世界はあんなにも広がったんだ。



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