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第1話:笑えない日々

あれは暑い夏の日だった。


太陽の光が地面をじりじりと照りつけ、僕の方へとその足取りを伸ばしていく。

空を見上げるのなんてまっぴらごめんだ。

のどの渇きと、この季節に真っ黒な背広を着ている不恰好な自分に腹が立ってくる。

“この世界に住んでいるほとんどの人たちが僕のような人生を歩んでいるんだ。”

そんな都合のいい考えばかりを張り巡らし、自分を落ち着かせる。そうでもしないと今の生活にはとんでもなく耐えられない。僕はそんなちっぽけな男だ。

そんな男にも今日という日はやって来る。だからこの道を歩いているのか……。笑えないな。


一段と暑い日差しが僕へと差し迫って来る。少し立ち止まり、大きく息を吸い込んだ。そしてそっと息をはく。僕なりの気持ち良さが巡ってくる方法だ。

“今日だけは特別だ”そう思い、洒落たカフェテリアに入った。わざわざ日差しの入るガラス越しの席にしたのは、すぐそばでいそくさと道を急ぐ人たちを見て、優越感に浸るため。

あと何分後かには僕もそういった運命になるのに……。本当に笑えないよな。


店内には、ゆったりとした音楽と時間が流れる。静かな空気が僕をのみ込んでいく。メニューを見ると、高級感漂うコーヒーばかりがずらりと並んでいる。

エソプレッソ、カプチーノ、カフェラテ、カフェオレ、カフェモカ…どれも飲んでくれと言わんばかりの写真映りだ。さて、何にしようか。悩んでいる姿がガラスにうつり、そこには少し後ろめたさが残る。

優越感は自ずと消えてしまっていた。

そんな姿が注文を決めた余裕に見えたのか、女性店員が注文を聞きに来た。

「ご注文はお決まりでしょうか?」

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