★「ある騎士の休日」★
……どうしてこうなった。
「?どうしたの、アル様」
「……いや、気にするな、リル」
「?うんー」
見下ろす先には、ちょっと寒そうに鼻をこする少女。
盛大に家から送り出された今日のリルの格好は、ちょっと厚着をしつつも、全体的に白でふんわりまとめた可愛らしいお出かけ着だ。頭をすっぽりと隠す羊毛帽子が何とも愛らしい雰囲気を醸し出していて、いかに今日の外出に夫人が気合を入れたのか分かる。きっと滅多に使わない服達を、ここぞとばかりに外に出して来たのだろう。その努力は、見るところ成功したようにもみえる。
ただ、それに並んで歩くのが、何故俺なのかという問題があるが。
俺のもとにクロアール夫人の連絡が届いたのは、リルと別れてから早三日後のことであった。
てっきり例のもう一人の御令嬢、サンパレッタ嬢のことかと思ったのだが、なんと意外なことにリルから俺に頼みごとがあるということだ。話を聞きに再び屋敷に出向くと、どうもリルが俺と街に付きあってもらいたい所があると、夫人に申し出たのらしい。
引きこもりの娘からの提案に歓喜した夫人は、最後の希望が現れたとばかりに、俺に一も二もなく頼み込んだ。夫人の熱意と、単純にリルの頼みごとが気になった俺はそれを引き受けて、翌日である今日、俺はリルと街へと出向いていた。
見事に、というか幸先よく本日は晴れである。
「じゃあ行くか。そこには昼二の刻までに行けば良かったんだよな?」
「時間はまだあるよねー、アル様」
「そうだな……そうだ、リル、昼飯はもう食べたのか」
「あ、そういえばまだー。ていうか朝から慌ただしくて、朝ご飯もあんまり食べられなかったの」
「そうか……なら、市場にでも行くか。何か歩きながらでも、食べられるものがあるだろ」
「うん、ありがとー、アル様」
「気にするな。あと何か好みとかか何かあるか?」
「甘いの」
「……。あるといいな」
「うんー」
まぁ無いこともないだろう。