★「ある騎士の面会」★
妹の段取りで面会させられたフィーア・ランドルク伯爵夫人は、貴族婦人の鏡のような人物で、妹に聞かされた美句麗句が決して誇張ではないことを、俺に知らしめた。
幸いなのか不幸なのかは分からないが、確かに夫人は俺を怖がらなかったし、久しぶりに穏やかな時間を過ごすことが出来たのも、僥倖だったと言えよう。
夫人の夫であるランドルク伯爵も、夫人とは若干歳は離れているものの、矍鑠としたしっかりとしたお方で、今回のことも喜んで承認なされて下さった。
そんな訳で妹の思惑は兎も角、俺はこの伯爵夫妻のことを気に入り、そして向こうさんも俺にまた訪ねて来て欲しいと言って下さり、これくらいならこの先もやっていけそうだと安心した矢先のこと。
これが本日の本題とばかりに、帰り際間近の別れの挨拶の時に、夫人から別な女性との面会を提案させられたのであった。
「大丈夫よ。貴方はとても礼儀正しいし、マナーもきちんとなっていますわ。妹さんが心配なさらなくとも、すぐに素敵な方と出会いなされるでしょうけど、折角の機械ですし、私の知り合いに騎士様に憧れている方がいらっしゃいますの、是非とも一度会って頂けないかしら?」
わざわざ俺達の都合に付きあって下さった伯爵夫婦の頼みを、無下に断ることなど俺に出来ようがなかった。